物産展では出店者同士は競合であり来場者を奪い合うライバル……と考えるのが一般的かと思うが、楽天市場 うまいもの大会は毛色が異なる。どうすれば商品がもっと売れるかなどの情報を店舗間で交換していたり、出店者が自分の店舗だけでなく、イベント全体の売上を気にしていたりするのだ。
塩沢氏によれば、楽天市場 うまいもの大会では、1時間おきにPOSで各店舗の売上や商品の消化率を確認し、全体での最終的な売上を計算している。そしてそれをもとに「今日は売上が少ないからチラシを配る人員を増やそう」「盛況だから売場に人員を集めよう」などの戦略を随時変えているという。
「出店者にとっては自分の店舗の売上が重要なはずで、全体の売上目標はあまり関係ないのだが、気にしてくれる人が多い。売上が目標に到達しなさそうな場合に、自分の休憩時間を削って店頭に立ち続けてくれる人もいる」(塩沢氏)。
物産展開催前夜には決起会を開いているそうだが、そこには出店者のほぼ全員が参加している。また毎日の朝礼では、前日に売上が伸びた店舗がそのコツを説明しているという。
情報を得た各店舗の商品や売り場の改善も早い。シンガポールでの物産展に出店した「築地料亭 竹若」は初日、パフェ型の海鮮丼を販売していたが売上があまり伸びなかった。そこで翌日には、現地の人々の嗜好を合わせて開発したロール巻きのような商品を売り出した。楽天市場というプラットフォームでともに頑張っているという共通意識があるからか、店舗間で信頼関係が築かれ、各店舗の売上向上につながるいい効果を生み出しているようだ。
◇築地料亭 竹若は総料理長が現地に赴いた
日本発グルメはシンガポールで受け入れられるか--「楽天市場」11店舗の挑戦
「一体感を作っていくことが大事。ただ場所を借りるだけだったら、僕らが物産展を開く意味はない。楽天と店舗と、会場を貸してくれた企業の三位一体で、顧客に喜んでもらえる売場をつくる努力をしている。これまでに培われた、店舗間と運営の結束力が僕らの資産だ」(塩沢氏)。
なお、日本で開催する物産展も含め「人件費を考えると正直利益はない」という。ではなぜ計18回も開催しているのか。塩沢氏は「楽天市場の認知度は高まってきているが、EC化率はまだほんの数%(経済産業省の8月発表資料によるBtoCのEC化率は3.7%)。僕らがやらなければならないのは、『楽天市場は知っているがECはやったことがない』という人々に、リアルの場でその接点をつくること」とし、「楽天市場を使ってくれというよりも、ただECの面白さを知ってもらいたい」と自身の思いを語った。
楽天市場は日本の地方自治体との取り組みも進めている。12月初旬から中旬には、静岡県との提携により実現した、楽天市場の既存店舗を含む同県内20店舗の商品を販売する特設ページを、シンガポール楽天内に立ち上げる予定だ。
今後、食品に限らず幅広い商品を海外に販売したり、楽天トラベルと連携して各地域への旅行商品を販売したりすることも検討している。そして、静岡をモデルケースとして全国の地方自治体に横展開していきたい考えだ。
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