椙原氏 : いま連載している作品は、ほぼすべて単行本にしています。ただ、今後は作品数がさらに増える予定ですので、すべて単行本にはしない可能性もありますが、電子書籍化は必ずしていきます。
赤沼氏 : 横にするとどうしても幅が狭くなったりするので書籍化にあたりかなり加筆しています。アップにすると背景や人物の肩なども切れてしまうので、描き足したりする苦労はありました。ただ、読者からは「同じ作品なのに印象が変わる」とご評価はいただいています。
椙原氏 : やはりウェブだとチャレンジングな取り組みもできますよね。マンガ雑誌では紙面の都合上どうしても載せられない作品でもアプリでは掲載可能なので、新たな才能が生まれる可能性は高まるのかなと思います。
また、マンガボックスが講談社を始め出版社の方々にご協力いただけたのは既存のビジネスモデルを壊さなかったところがあるのかなと思います。週刊誌はいろいろなところで作品を読んでもらって、最終的により多くの人に単行本を買ってもらうことで収益化するビジネスモデルだと思います。そこに配送や印刷コストが掛かっているのでどうしても有料になってしまうのですが、アプリではそういったコストが掛からないので、無料で提供できて、最終的に単行本や電子書籍を買ってもらうことで収益化できます。この既存の紙のビジネスモデルをそこまで壊さないところが大きいのかなと思います。
赤沼氏 : スマホマンガによって、これまで紙だとハードルが高いと思っていた人たちがマンガを描くきっかけになればいいと思います。そして作家がどんどん増えて、その作品を読みにくる新たな読者がいれば、相乗効果で業界を盛り上げられるのかなと思います。また、「ReLIFE」のように縦読みのデジタルマンガを横に再構成して単行本にすることで、アプリとは違う新しい見せ方もできるのではないかと思います。
椙原氏 : マンガボックスはグローバルでアプリを提供しているのですが、ほぼすべての作品で日本語版の掲載と同時に繁体字版と英語版も提供しています。なので海外にいる方でも、同じタイミングでその作品が読めるということですね。特にプロモーションはしていませんが、台湾や北米では割と読まれています。もちろん日本とは全然規模が違いますが、市場は間違いなくあるので下半期はそちらにも力を入れたいと思います。
赤沼氏 : comicoは7月に台湾に現地法人を設立して台湾版を、10月に親会社であるNHN Entertainmentを通じて韓国版を提供しています。マンガボックスと同様に日本の作品をローカライズして提供もしているのですが、comicoのサービスのコンセプトは才能の発掘です。それは日本に限らず、国ごとの優れた作家さんの発掘もひとつのミッションだと思っていますので、現地でアプリを作ってそこに作品の投稿機能も設けています。現地発の作品も生まれてきています。まだ始まったばかりなので話数は少ないですが、台湾と韓国でそれぞれ20人くらいの作家さんが作品を投稿しています。
赤沼氏 : そうですね、やはりその国ごとに公序良俗のルールがありますし、連載という形になってくると、最低限ストーリーの矛盾を直すなど編集作業が発生しますので、そういった業務をする人が必要ですね。
椙原氏 : まだサービスが始まって1年ですので、スマホで連載マンガを読むという文化が根付くにはもう少し時間がかかると思います。ただ、紙の時代のマンガのポテンシャルを考えるとスマホマンガの市場は、相当開拓の余地があると思うので、1人でも多くの人に自分たちの作品を読んでもらえる環境作りをしていきたいですね。
赤沼氏 : 私たちも同じで、新たな才能が生まれ、それによって読者が増えることで、紙も含めたマンガ業界が活性化することが望ましいと思っています。また、comicoとしては投稿作品が人気になって、作家さんが有名になってくれることがサービスとしてのゴールかなと思います。そういう意味では、「ReLIFE」のようにcomicoよりもメジャーになってしまうような作品をもっと生み出していきたいですね。
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