ロボットに注目しているのは日本、それにGoogleなどシリコンバレーだけではない。ユーザー1億人を有するロシア最大のインターネット企業Mail.ruを共同で創業したDmitry Grishin氏もロボットの将来性に賭けている。Grishin氏は2012年にロボット技術企業に投資する投資会社Grishin Roboticsを立ち上げており、すでに8社に投資している。GMICでGrishin氏は、投資家の目からみたロボット業界の現在と課題について語った。
Grishin氏は、にわかのロボットファンではない。大学でロボット学を学んでおり、インターネットかロボットかを選ぶ上で、まずはインターネット分野に進んだという経歴を持つ。
ではなぜ、いまロボットなのか。Grishin氏は「30年前から関心は高かった分野」としながら、ここ数年で劇的な変化が起きているとみる。「20年前なら1基のロボット製造にゆうに100万ドルがかかった。プロトタイプ作成に3~5年を要しただろう」とGrishin氏。状況を変えた立役者の1つがスマートフォンで、カメラ、センサーなどのコンポーネントが安価になった。3Dプリンタの利用により、プロトタイプの作成も容易になった。「3~5人の開発者、5万~10万ドルでスタートできる。これは10年前にはありえなかったことだ」(Grishin氏)。
素地が整いつつある中、いまロボット分野に必要なのは、「さまざまなカルチャーをもたらすこと」と述べる。「歴史的にハードウェア企業は製品をつくることにフォーカスしており、ユーザーにフォーカスしていなかった。ユーザーフォーカスをロボット業界にもたらす必要がある」と語る。こういった考えもあるのだろう。Grishin Roboticsはコンシューマーロボットにフォーカスしている。
Grishin氏はロボット分野が今後発展するために自身が重要と考えるいくつかのポイントを挙げた。まず外観。ヒューマノイドロボットだけにフォーカスすべきではないと語る。「ロボティクスは素晴らしいハードウェアとソフトウェアの組み合わせが大切であって、人の形(ヒューマノイド)に制限されない」と述べたほか、「ハードウェアとロボット技術のみへのフォーカスもダメ。成功するロボット企業を立ち上げたいのなら、美しい魅力的な外観が必要だ」と続ける。技術重視の業界を変える必要があるとみているようだ。
次は価格だ。「普及するためには現実的な価格が必要」であり、ノートPCが一気に普及した2500~3000ドルに下がる必要があるという。Grishin氏は自社が投資するDouble Roboticsを紹介した。Segwayのような外観で上にはタブレットのようなパネルがついた“テレプレゼンスロボット”を開発しており、遠隔操作により行きたいところに車輪移動できる。Twitterなどの企業や教育機関への導入も始まっている。
品質も重要だ。中でも「自分たちのロボットがどの問題を解決しているのか」を徹底して考える必要があると強調する。顧客は問題を解決するものにしか対価を払おうと思わないからだ。この考え方はビジネスモデルにも当てはまり、「技術ばかりを考えるのではなく、どの問題を解決するのかを考えた後、どの技術を利用するのかを考えることが大切」と釘を刺した。
スマートフォンとの関係については、「スマートフォンはユニバーサルのコントローラになるだろう」と予言した。スマートフォン分野はロボット産業の大きな支援役になるとして、相互に進んでいくと予想した。
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