「シリコンバレーの真似」にとらわれずグローバルを目指せ--NTTドコモ・ベンチャーズ - (page 2)

岩本有平 (編集部)2014年01月29日 12時00分

 実数は公開していませんが、1期と同じ程度の応募がありました。アーリーステージのチームが多く、他のインキュベーションプログラムに参加する人も少なくありません。

 募集要項という点では1期と大きく違う点が2つあります。まず1つめは募集要項を詳細にした点です。1期では、ある程度大きな項目までしか要項を出していませんでした。それを詳細にしたところ、テーマに沿ったチームが多く応募してくれました。

 もう1つは、パートナー企業と一体となって支援をする「パートナーブースト枠」を設置したことです。インキュベーションプログラムでは、外部の方々とも組むことができないかと考えていました。今回は時間もあまり無かったため、NTTグループとしてNTT西日本、ぷらら、NTTデータとの枠を用意しました。3期、4期のプログラムがどのようになるかはまだ分かりませんが、積極的に外部とは組んでいきたいと思います。

 選考についても、1期からの反省というわけではありませんが、「できるだけ多くの会社と会おう」ということをやりました。やはり、最後の最後は「人」で判断します。分野や開発の進捗という切り口よりは、その人の着眼点やチーム力につきると思います。会いもせずに紙だけで評価だけをするというのは正しいやり方ではないでしょう。

 社内を見ていて「なるほど」と思ったことがあります。それは第2期のキックオフミーティングのことです。ミーティングの冒頭、スマートライフビジネス本部の本部長である阿佐美(弘恭氏)が、参加チームに向かって「プログラムに応募してくれてありがとう」と言いました。ベンチャー支援の専門家ではない、そしてまだ1期の大きな実績も見えていないという中で我々のプログラムに参加してくれて感謝している――それはその通りだと。そこには我々も真摯(しんし)に、真面目に向き合わないといけません。

--プログラムは前回より1カ月短い4カ月になっています。何か理由があるのでしょうか。

 ある意味では、我々のプログラム自体がスタートアップです。スタートアップを取り巻く環境は短期間で大きく変わりました。CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ができ、インキュベーションプログラムも増えました。いろいろなところでマッチングも起こっており、一義的には充実してきていると思います。

 そこでドコモが同じようなスタイルでオペレートするのがいいのか、まったく違うやり方をするべきかという判断はあると思います。

--イノベーションビレッジは積極的に活動されているようですが、日本のスタートアップ全体の動きについてはどのようにお考えでしょうか。以前のインタビューでは、「日本のスタートアップエコシステムがまだ未完成だ」と語っていました。

 我々も調査をして分かったのですが、登記されている数で言えば実はスタートアップの数はここ1年で特別増えているわけではありません。ですが、スタートアップを見られる場、紹介する場が増えてきたということです。しかしながらスタートアップを取り巻く環境は加熱しており、今まで見えていなかったステージのスタートアップも見えるようになってくると思います。

--秋元さんはドコモ・ベンチャーズに参画する前は米国のDocomo Capitalで投資をしていたと聞きました。日米を比較しての環境の違いについてはいかがお考えでしょうか。

 以前、「日本の(スタートアップの)エコシステムが未成熟」といった内容のことを申し上げましたが、仮説としては当たっていた気がします。エコシステムとして未成熟である理由は、1つの大きな問題があるのではなく、仕掛けやプレーヤーが不足している、M&Aの件数が不十分など、さまざまなところにあります。これも我々で調査したのですが、数字としても「やっぱりね」と納得するようなものでした。

 だからといって「なんでもシリコンバレーを真似しよう」というのはナンセンスです。真似できるものは何なのか、マネできないものは何なのか、CVCとしてやれることは何なのか、それぞれを考えてアプローチすることが重要です。

 日米の大きな違いとしては、米国ではシリアルアントレプレナーを経てベンチャー投資をやる人が多い一方、日本ではそれが難しいということです。その(シリアルアントレプレナーの)代わりができるのは日本のCVCだと思っています。もちろんまったく同じ機能かどうかというと難しいですが。

--NTTドコモ・ベンチャーズがスタートしてからの10カ月弱を振り返ってどうお考えでしょうか。

 1番大きいのは「(CVCを)みんな始めた」、そして振り返ったら「我々もその流行に乗った」ということでしょうか。長年、広義でスタートアップの仕事に携わっていると思っていますが、人に言わせれば「お前も(流行に乗っているの)だ」ということです。今では政府系ファンドもCVCも活発です。

 結局この動きによって何が起こるのかというと、限られた数のスタートアップに投資家が集まり、バブルが起こるということです。バリュエーションもとんでもなく高額になったりします。

 一義的にはスタートアップにとってはいいことでしょう。ですがこれがちゃんと継続できるかは不安です。これは定めですが、こういった流行は廃るときも早いものです。

 あまり臆病になる必要はありませんが、単純に流行に乗って必要以上に高いバリュエーションをつけたりしないほうがいい、と思うのでが正直な気持ちです。5年、10年先を見て欲しい。

--2013年末には100億円規模の新ファンドNTTインベストメント・パートナーズファンド2号(NIP2号)の組成も発表されました。

 今回のNTTインベストメント・パートナーズファンド2号の組成は、引き続きベンチャーへの出資を通じ、サービス事業者を下支えするNTTグループ各社との協業促進を積極的に継続していくことを意味しています。

 今後NTTグループとしてもプラットフォームやミドルウェア等を提供するB2B2C型モデルのビジネスを強化していくにあたり、それらを実現する上で必要な機能・技術を有するベンチャーとの協業及び連携は必要不可欠です。

 ドコモ・ベンチャーズとしては、両ファンド(ドコモ・イノベーションファンド,NTTインベストメント・パートナーズファンド)の運用を通じて、広くベンチャーとの接点を持ち、引き続きNTTグループ全体との協業を図っていきたいと考えております。

--2014年のNTTドコモ・ベンチャーズの目標を教えて下さい。

 キーワードは「グローバル」です。イノベーションビレッジもグローバルに展開します。資金調達についても世界を視野に入れます。我々としても、提携する500 Startupsにしても外、つまり世界に出ていくための環境や設備作りに力を入れています。

 北米の研究開発拠点「NTT Innovation Institute(NTTアイキューブ)」などもあります。NTTグループ全体の海外ビジネスとも連携するということもやっていけると考えています。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]