まどマギ、バイオ、エヴァ--札幌で疾走する“痛タクシー”の仕掛け人が語る「大人の本気」 - (page 3)

 広告費などのお金のやりとりをしていないからこそ言えることでもあるんですけど、やるからには徹底してやりたいしこだわりたい。そうじゃないと、ファンの方は敏感ですから愛がないって見透かされちゃうじゃないですか。まわりからはバカなことと思われるかもしれないけど、いい年した大人たちが楽しいと思えることに本気になって取り組むことが大人の本気でしょうし、だからこそ話題も共感も得られると思うんです。お金ありきとか回収とかそういう話ではなく、みんなが楽しんでくれることが第一。まどマギなどの版権ものが目立ってますけど、北海道で面白いことやろうと一緒になって考えてくれる人たちとやっていきたいし、それであればコンテンツの有名無名は問わないです。

--余談で伺いますけど、このタクシーが海を渡る可能性はありますか。

  • アンデッド系ご当地アイドル「フランチェスカ」の痛タクシー。フランチェスカはゲームショウなどにも出展して、道外でのアピールも行っている

 まどマギのときに、東京から乗車することの問い合わせ自体はありました。さすがに現実的ではなかったのですけど。展示車ではなく、あくまで業務に使っている車両であるのでなかなか難しいですが、私個人としてはクオリティに自信もあるので、東京、特に秋葉原に持ち込んでみたいです。

 痛タクシーの取り組みをしたのは弊社が初めてではないですし、いろんな事情が各地であるかもしれないですが、それで及び腰になるのではなく、やってみてほしいんですよね。それが全国的に広まって、痛タクシーサミットみたいなことが行われるのが夢でしょうか。そうでなくても、あくまでスタンスは面白いことをやるのと大人の本気ありきですから、海を渡るチャンスは狙いたいです。

--今後やってみたいアートタクシーの題材はありますか。

 痛車が物珍しく取り上げられていた時期は過ぎてますし、痛タクシーが目立つ状態もあと1年ぐらいがいいところかもしれません。だから痛タクシーやアートタクシー以外の取り組みも、先を見据えて考えないといけないかなとは思います。でもまだまだ、それこそさっぽろ雪まつりのような人が多く集まる時期には、大きな花火を上げたいですね。

 「艦隊これくしょん」や「ラブライブ!」といった作品のファンからの要望もあったりします。確かに最近の作品だったりかわいい女の子のほうが話題になりますけど、個人的ということであれば、40~50代の方々が好きだった数十年前のマンガやヒーロー物でやりたいです。

 本来のタクシーの客層にあっているというのもありますけど、今のアニメやマンガに眉をひそめている人も、昔は好きだった時代があったはずなんですよ。きっと懐かしんで喜んでくれるだろうし、宴会シーズンや接待に使えるかもしれない。「ゴルゴ13」で、トランクに「俺の後ろに立つな」と書いているだけでも違うでしょうし(笑)、個人的には「ブラック・エンジェルズ」も好きでしたし。決してメジャーじゃなくても、いわゆるおじさん世代が熱中していた作品を、今の若い人に伝えたいという気持ちもあります。それで世代差があっても、実はお互いにアニメやマンガが好きとわかれば盛り上がるでしょうし、それで壁がなくなってくれれば、最近のアニメなどにも理解を示してくれる可能性もありますよね。

 あとはメディアとしての可能性があるとするなら、道内のクリエイターやキャラクターを支援することでしょうか。カムイの痛タクシーでは、イラストを公募したんです。もともとクリエーターの方たちの作品披露の場になって、スポットが当たればと考えていたので。そうしたら車体に使われたイラストを描いた方に、その後カードゲームのイラストの仕事が舞い込んできたようです。キャラクターだけでなくクリエイターも含めた支援の効果があるのだとしたら、カムイの今後にかかわらず、公募による新しい痛タクシーを作りたいですね。

--タクシーが作品披露の場というのも面白いですし、それこそメディア化になりますね。

 以前、ある駆け出しの漫画家さんと話をしていたとき、タクシー1台をライブドローイングする案もあったんです。それは本人がためらわれて実現しなかったんですけど、それぐらいのことをしてもいいと思ってます。のちに有名になった漫画家やイラストレーターのデビュー作が、長栄交通のタクシーの車体ってなったら面白いですし、本当にそのようなことが実現したら、こんなにうれしいことはないじゃないですか。

 いまだにマンガやアニメ、ゲームを楽しむ環境として、東京と比べると不遇なところもあったり、根強い偏見もあります。でもその世界で活躍する北海道出身のクリエイターやアーティストの方もいらっしゃいますし、イベントもそうですけど、沿岸バスのように萌えキャラのバスを運行して緩い雰囲気を出そうとするような、道内でも面白い取り組みをしようという人や企業も出てきつつあります。もっとそういった方々が出てきて、大きなコンテンツやイベントなどが生み出せれば、それらを起点として北海道全体が変われると思います。そのお手伝いをタクシーを通してしていきたいです。

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