「iTunes Radio」の勝機--アップル新音楽サービスが後発ながら示す可能性 - (page 2)

Paul Sloan (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2013年06月20日 07時30分

 デジタルラジオは、アルゴリズムによって提供されるものであれ、PandoraやAppleのように人間による選択と機械による選択の組み合わせによって提供されるものであれ、急速に拡大しているが、まだ初期段階にある。莫大なユーザー数を誇るPandoraは、米国の全ラジオリスナーの7.33%を獲得したと述べている。つまり、多くの人はPandora陣営にまだ移行していないということだ。Appleが狙っているのもそれらの人々である。

 しかし、ここにPandoraの大きな課題がある。Pandoraは世界規模には程遠いサービスだ。Pandoraは米国で音楽の権利を有しており、つい最近オーストラリアとニュージーランドでの権利を獲得した。レーベルや音楽出版社と直接契約を締結したAppleと異なり、Pandoraは各国の権利団体と交渉を行う。そのため、市場の拡大が非常に困難で、時間もコストもかかる。

 Pandoraの広報担当者Amanda Livingood氏は、「いつかPandoraを世界中で提供できることを切に願っている。さらなる国際進出に関する当社の姿勢に最もふさわしい表現は、『根気強く機会を窺う』だ」と述べた。

 したがって、iTunes RadioがPandoraに酷似しているとの議論は現時点では公平なものだが、Appleの世界的な野心に照らして考えれば、あまりにも米国中心の考え方でもある。Appleが2013年秋にiTunes Radioを投入するとき、米国でのみ提供される予定だが、Cue氏は他の国も順次追加していく計画だと述べている。音楽業界の消息通によれば、それらの国々には英国、フランス、ドイツ、日本が含まれるという。しかし、同サービスはごく短期間で拡大する可能性がある。Appleが音楽レーベルや音楽出版社と締結した契約では、多くの場合、iTunesのサービスが提供されている国々(現時点で119カ国)で同社に権利が与えられる。

 Apple関係者は米国での投入以外の計画について、コメントを控えた。

 メディアはiTunes RadioとPandoraの機能を比較しているが(米CNETのDonald Bell記者がこちらの記事で両サービスを比較している)、世界のほとんどの場所で、iTunes RadioやPandoraに似たサービスは全く提供されていない。それは高収益が見込まれる広大な未開の地であり、Appleはそれらの市場の開拓に挑むことができる。

 経験豊富な音楽業界人で、Warner Musicのデジタル部門の元トップであるMichael Nash氏は、「何らかのサービスが全世界的なラジオ契約を締結したのは、今回が初めてだ。ほとんどの場所で、この種のサービスは存在していない。このことの本質は機能強化ではない。Appleは実行できる立場にあり、Appleに対抗できるほどの規模で音楽業界と事業提携を結んでいる企業や、音楽事業を展開している競合は皆無だ」と述べる。

 Nash氏は、iTunesは既に世界展開されているため、Appleは地域ごとの好みやジャンルを、他社にはできない方法で理解するためのデータを有していると指摘する(iTunesには既に5億7500万人の顧客がいることを思い出してほしい)。Pandoraは、発足13年目の「Music Genome Project」の一環として、音楽の専門家の力を借りて音楽を記録しているが、たとえ新しい市場に進出したとしても、Appleと同じ方法で競争することはできない。

 iTunesとのさまざまな契約に携わった経験を持つNash氏は、「Appleは誰よりも優れた音楽消費データを有している。同社はユーザーの音楽コレクションの中身だけでなく、ユーザーが何を聴くのか、どれくらいの頻度で聴いたのか、ということも把握している。楽曲を提案する上で極めて有用な情報だ」と述べた。

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提供:Apple

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