著書『アマゾン、アップルが日本を蝕む 電子書籍とネット帝国主義』(PHPビジネス人新書)で電子書籍の「アメリカ・モデル」の輸入を批判する岸博幸氏も、両制度に対して批判的だ。
「日本の出版ビジネスにおける独自の慣行として、再販売価格維持制度(再販制度)と委託販売制度というものがあります。再販制度(は)(中略)その適用が決められた1953年当時は正しい判断だったのでしょうが、現在はプラスとマイナスの両面があると言わざるを得ません――(中略)――(委託販売)制度は、日本全体が貧しいときなどに出版文化を維持するためには必要だったと思いますが、文化も競争にさらされることが必要な時代にそれが望ましいかとなると、別問題ではないでしょうか」(81-82ページ)。
「電子書籍フォーキャスター」の吉田克己氏は「ダイヤモンド・オンライン」の連載記事の中で、米国と日本の出版社のビジネスモデルの違いを紹介している。その中で、このようなことを述べている。
米国の場合、事前注文制で書店が買い取りますので(中略)(紙から電子書籍に移行しても収入構造は変わらないが:筆者注)日本では再販制度(原文ママ。委託販売の間違いか)の元、出版社に平均4割の返品(売り上げダウン)が起こりますので、上記の400円(売り上げ予測)は額面どおりには受け取れません。
『新聞・出版 絶望未来』(山田順著、東洋経済)は、日本では電子書籍は普及しないと結論づけるが、その根拠となっているのが、「再販」「委託」の日本と、米国の出版産業の違いだ。
「アメリカの書籍流通には再販制度も委託販売制度もなく、紙の書籍も流通業者が出版社から買い取って、それを小売の書店に売り、書店側が自由に販売価格を決められるようになっている(中略)だから、紙が電子に代わっても、システム自体は同じなので、そうそう大きな問題にならない。ところが日本では、紙は定価で電子は自由価格と別々のシステムになっている」(24ページ)。
「別々のシステム」という部分には説明が必要だろう。米国で電子書籍事業が本格的に始まった2007年、アマゾンを始めとする電子書籍事業者は、出版社との間で、日本でいう「買切販売」と似た「ホールセール(卸売)・モデル」による契約を出版社と交わした。出版社は一定の卸値で本を売り、最終小売価格は、電子書籍事業者が自由に付ける、というモデルだ。
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