【第6回】リアルとソーシャルメディアの融合 - (page 3)

安藤大(アジャイルメディア・ネットワーク/コミュニケーションデザイナー)2012年09月07日 08時00分

リアルとソーシャルメディア双方向パターン

 最後のパターンは、戦術した2つの特徴の合わせ技だ。つまりリアルで起きている事をソーシャルメディアに可視化し、ソーシャルメディアで起こったことをリアルにフィードバックするパターンである。

事例は「NIKE+ RUNNING」。ランニング中に起動することで、自分のコースなどを記録してくれるスマートフォンアプリだ。


「NIKE+ RUNNING」

 このアプリは、GPSに連動してランを自動的に記録したり、ペースによって再生する音楽を切り替えてくれたりと、走るモチベーションを高めてくれる、ランナーにはありがたいアプリだ。筆者もにわかランナーだが、走る度にお世話になっている。

 これは前述のFuelBand同様、NIKE的な世界を作るための、非常に大きなブランディング戦略の一貫なのだが、今までにない機能がひとつ搭載されている。それは、孤独に走っているランナーを、ソーシャルメディア上の友人がリアルタイムで応援出来る機能だ。

 ランナーは走りだす時、そのランをFacebookで共有するか選択でき、許可すると友人のニュースフィードに右下の画像のようなものが表示される。


友人が「いいね!」をすると声援が響く

 友人がこのポストにいいね!をすると、ランナーのスマートフォンのイヤホンから、実際のサウンドとして「声援」が響くという仕組みだ。

 この機能をきっかけに、ランナーである私がNIKEのファンであるという事がソーシャルメディア上に広がる。そして、友人がそれに対してとったポジティブな行動が、リアルタイムに戻ってくる。このサイクルによって、私の「NIKEが提供してくれる体験」に対する満足度が上がっていくのだ。

 友人同士のつながりというソーシャルメディア最大のパワーをうまく活用した素晴らしい事例である。

すべての事例に共通するある特徴とは?

 すべての事例に共通している特徴がある。それは「ユーザーが自然に送っている日常行為をクチコミとして、マーケティング施策にしている」という点だ。

 Coca-Cola Villageでもケンタッキー大学でも、ユーザーは遊んでいるだけ。別にマーケティングの手伝いをしているわけではない。私も別にNIKEの宣伝をしたくて走っているわけではない。だがこれらの喜びに支えられた行為は、結果的にソーシャルメディアに乗って、ブランドのイメージを高めている。

 いかにアイデアを使ってリアルな行動を喚起するか。そして、それをどの方法でソーシャルメディアに伝えていくか。そこにこれからマーケターとしてチャレンジすべき、ひとつのポイントがあるのかもしれない。

 今後もますます加速していく、リアルとソーシャルメディアの融合から、しばらくは目が離せそうもない。是非、皆さんがご存知のリアルとソーシャルメディア融合の事例など、教えて欲しい。ご存知のかたはぜひ、Twitterアカウント@MasaruAndoまで。

安藤大氏
安藤大(アジャイルメディア・ネットワーク/コミュニケーションデザイナー)
広告会社を経て、2010年より現職。クライアントのソーシャルメディア上のコミュニケーションデザインに従事しながら、コラム執筆なども担当。WEBと広告、ブラジル音楽とアメリカ映画を糧に、その全てに貢献すべく奮闘中。

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