Dadich氏:基本的にはほとんど変わりません。我々のやり方では、編集者にしてもデザイナーにしても、紙版とデジタル版を同時進行で進めています。他の出版社、編集部で見られるようなチーム分けはしていません。1つのチームで紙もデジタルもこなす、という意味です。従来の作業に対して若干の追加作業は必要になりますが、写真やライターの書く記事は基本的にまったく同じです。
編集作業の進め方ですが、InDesignを使い各種ファイルをインポートし、デザインツールで加工して……という流れに変わりはありません。10年間使い続けてきたツールやノウハウも、そのまま生かされています。
Dadich氏:おそらく、将来の道は2つあると思います。
我々はそのうち1つを「傘の戦略」と呼んでいます。統一ブランドロゴのもと雑誌やブログ、TwitterやRSSフィードなどさまざまなコンテンツを提供し、読者はPCやテレビ、携帯電話などさまざまなデバイスからアクセスしてそれを購入できるしくみを構築しよう、という趣旨です。「アクセスに対して有料」であって、そこに課金するシステムということが特徴です。
もう1つは、先ほど(前回)お話した「柔軟性」と「忠実性」をもっともよくバランスさせた形で提供する、ということです。エディトリアルデザインにせよグラフィックにせよ、見て楽しめるもの、美に対し忠実であるものを提供しつつ、どのようなデバイスであってもコンテンツにアクセスしたいという読者に対してはその方向性を重視した方法を提供するのです。
もっとも、電子雑誌ということで考えた場合、映像やテキストなどさまざまな要素をパッケージ化したものをタブロイド状で提供することが、もっとも適した方法だとは思います。
Clark氏:電子雑誌が普及すると、2つ大きな影響が出てくると考えているのですよ。1つは「有償化」。出版社側がコンテンツをパッケージ化したものを有償で提供する、ということの成功事例が積み上がっていくと、これまでウェブで無償公開していたコンテンツが減少する可能性があります。
Dadich氏:われわれConde Nastでは、すでにそうなっていますよ。
Clark氏:もう1つの影響は、電子ブックを介して「オンラインでの解析が可能になる」ということです。リーダーを通じて読者がどのようなコンテンツにアクセスしているかわかりますから、出版社は読者との関係を深めることができるようになります。解析により、レイアウトをこう微調整すればより読みやすくなるとか、読者の経験をよりリッチなものにすることも可能です。こう最適化したらもっと購読率があがるとか、広告をどこに入れれば効果的か、といった分析にも役立つことでしょう。
それらのすべては、従来の紙媒体では不可能だったことです。ウェブサイトの場合、実際にナビゲートしてみないとわからないことが多かったのに対し、電子ブックの場合「こういう情報が欲しいはずだ」と予想した部分にフラグを組み込みそれを検証することが可能になります。今後の雑誌制作においては、そのような解析がより有効に活用されるのだろうと考えています。
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