モバイルサービスの課題とKDDIの取り組みとは−--ワイヤレスジャパン2010基調講演 - (page 2)

インフラへの要求に応える

 インフラへの要求に対しては、インフラをどう強化するかが問題になると予測する。モバイルデータトラフィックについて、現在は1人あたり0.5kbpsしかない。しかし、スマートフォンが主流になることで、トラフィックがさらに増えてくることが考えられる。KDDIでは2015年頃には4.5kbpsと、現在の約10倍になる可能性があるとしている。

 これらのトラフィックの増加に対する解決策が必須だ。通常、携帯電話のシステムでキャパシティを増やすには、(1)使用できる周波数を増やす、(2)周波数利用効率のよい無線方式を導入する、(3)周波数の繰り返し利用を増やすためセルサイズを小さくする、の3つの方法しかない。周波数については、今後もらえる周波数を入れても約10倍のキャパシティを埋めるのは難しい。利用効率のよい無線方式として、LTEを導入予定だが、EV-DOと比べても帯域あたり約5倍にしかならない。しかも当面は、EV-DOとLTEが混在するため、3倍が限度だろうとした。

 セルサイズを小さくすることも有効だが、屋外では密度の濃いところで半径500m程度のセルとなっているほか、東京のようなビル街では効果が薄いといわれている。セルサイズをさらに小さくするには、フェムトセルの導入が必要になるとした。さらに、MediaFLOを加えないと、約10倍のキャパシティを埋めることは難しいだろうと話した。

 無線LANという方法もあるが、これも周波数が切迫してくることが予想されている。たとえば中野区の17.5万世帯に利用可能な周波数帯域226.7MHz幅を使った場合、一斉に無線LANが使われた場合は1世帯あたりの速度は279kbpsにしかならない。もしスループット30Mbpsでサービスすると、48.8Ghz幅の帯域が必要になり、現実的ではない。そのためにKDDIではFTTHに力を入れ、フェムトセルのバックボーンにする計画だ。固定系のブロードバンドをどのように広げるかが、データトラフィック増加対策のカギになるとした。

社会的な責任を果たす

 KDDIでは再生可能なエネルギーとして太陽電池を活用したネットワークセンターや衛星通信センターを設置している。さらに、太陽電池と夜間電力を組み合わせることで効率的な電力利用効率を求めたトライブリッド基地局を設置。約20〜30%の電力、CO2の削減を実現している。トライブリッド基地局については、現在10局程度の設置が終わっており、今後も増やしていくとした。

 災害時の通信手段の確保にも力を入れている。たとえば、ワンセグでいろいろな情報を発信。利用可能な基地局まで誘導するなどを考えている。さらに、auの基地局が使えなくても、ほかのキャリアの基地局が使えるなら、そのキャリアの携帯電話を通じてメールを送信できる仕組みなどの開発も進めている。

 青少年への安心・安全の取り組みとしては、子ども向けの携帯電話の提供、KDDIケータイ教室の拡充を進めている。さらにネットいじめ防止ツールの開発も進めている。ネット上の交友関係を可視化するシステムだが、個人情報の問題もあり、どのように運営するかはこれからだとした。

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