CMPSU-750TXJPは「定格出力」750W、標準的なサイズのATX電源ユニットだ。つや消しブラックに塗装された筐体は、デザインセンスを感じさせる仕上がりだが、最大の特長はそこにあるのではない。まず知っておいて欲しいのは、CMPSU-750TXJPの+12V出力が1系統、すなわち1レールにまとめられているという点だ。実はこれが、最近のハイエンドな自作PCにとって、大きなメリットとなるのである。
ご存じのように最近のCPU、例えばCore2DuoやCore2Quadなどは、以前のPentium Dと比較して消費電力が小さい。ところが特にゲーム系のハイエンドマシンに必須となる、描画スピードが高速なビデオカードは、CPUよりもはるかに大きな電力を必要とする。特に重要視されているのが、+12Vの出力である。
ところが電源ユニットの多くはマルチレール設計になっていて、+12Vの出力を3レール、4レールと分けている。当然、1レールあたりの出力は小さくなる訳だ。そうなるとトータルの出力では十分足りているのに、レール分けのせいで「ビデオカード分が足りない!」といった事態も発生するのである。
が、しかし。CMPSU-750TXJPの場合は、そういった心配が無い。CMPSU-750TXJPは+12Vの出力が1レール設計のため、トータルで最大60A、ワット数にしてなんと720Wを出力できるのである。これならCPU、ビデオカード、その他のデバイスを十分にカバーすることができる。また、750Wという出力自体が、筆者の経験上、実にバランスがいい。ハイエンド系のCPUとビデオカード2枚差し、複数のドライブを稼働させても、よほど特殊な環境でない限りは十分に対応できる。
最初からハイエンドなPCを自作するユーザーにも、スタンダードなスペックからスタートし、除々にアップグレードして行きたいユーザーにも、安心してお薦めできる電源ユニットなのだ。だからこそこのCMPSU-750TXJPを代表として取り上げた訳だが、もちろんお薦めの理由はそれだけではない。まず何より用途の幅が広い。
最初にも書いたがCMPSU-750TXJPは、ゲームユーザーやオーバークロックユーザーなどに最適な電源ユニットである。さらにCMPSU-750TXJPはATX12V v2.2規格だけでなく、EPS12V 2.91規格にも対応している。このためATX+12V電源コネクタは4+4ピンになっており、一般的なマザーボードだけでなく、サーバやワークステーション用途にも対応できる。
もっともサーバなどで使用する場合、その信頼性が問題になってくるのだが、CMPSU-750TXJPは安心だ。メーカーの5年間保証、そしてMTBF(平均故障間隔)10万時間などは、信頼性をアピールするものだから。また、設計自体にも信頼性を優先させたと思われる部分がある。それは搭載している140mm角電動ファン(TX650Wは120mm角)に、2ボールベアリングタイプを採用している点だ。
電動ファンには大きく分けてボールベアリングタイプと、スリーブタイプがある。大ざっぱに言ってしまうとボールベアリングタイプは信頼性が高く、スリーブタイプの方が静音性に優れている。もっとも製品によって状況は異なるので、全てがこの通りという訳ではないのだが……。いずれにしてもCORSAIRはCMPSU-750TXJPを始めとして、電動ファンに信頼性を求めた訳だ。
一方、ゲームマシンなどを組む場合に重要なのが、ビデオカード用の補助電源、いわゆるPCI Express電源コネクタだ。この点、CMPSU-750TXJPは大変充実している。汎用性の高い6+2ピンのPCI Express電源コネクタを、計4つ提供しているのだ(TX650Wは2本)。ATIのHD 4870X2シリーズなど最先端のハイエンドビデオカードは、8ピン電源コネクタと6ピン電源コネクタ、2系統の補助電源を必要とする。そんなビデオカードを2枚差ししても、CMPSU-750TXJPなら問題なく利用できる。
しかも+12Vが1レールで、供給される電力も十分確保できる。この点だけを見ればCMPSU-750TXJPは、ゲームマシンの電源ユニットにピッタリなのである。サーバにも、ゲームマシンにも活用できる。これこそ汎用性の高い電源ユニットと言えるだろう。「これを選べば間違いない」という理由はこのあたりにあり、別の言い方をすると「迷ったらCMPSU-750TXJP」ということなのである。
もちろん固定式の電源ケーブルに難色を示す人もいるだろう。しかし、逆にモジュラータイプのコネクタ接続を、ノイズなどの関係で嫌う人もいる。固定式の電源ケーブルであっても、きちんと整理してやれば、本体ケース内のエアフローにはほとんど影響しない(そのためにCORSAIR電源ユニットには、結束バンドが付属している)。
実際に動作させてみたが、CMPSU-750TXJPに搭載された電動ファンのノイズは、本体ケースの空調用電動ファンなどのノイズに飲み込まれてしまった。ベンチマークなどで負荷を掛けつつ、消費電力の推移などを見守ってみたが、まったく問題は見つからなかった。
後述するが来るべきCore i7時代も見据えて、CMPSU-750TXJPは電源ユニット選びの選択肢に、是非とも入れたい一台だと感じた。
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