会社が増資するということは「お金が振り込まれれば完了」という単純なものではありません。あらかじめ会社法で定められた手続きを踏んでおく必要があるのです。今回は、増資するのに必要な最低限のチェック項目としての実務資料をまとめてみたいと思います。
調達活動前に必要な決議
第三者割当増資を実施すると株式が増えますので、既存株主にとっては議決権を希薄化するという意味合いも持ちます。よって、株主の同意を得ておく必要があるわけです。そこで必要となる資料や決議事項を順にまとめてみたいと思います。
手順1. 取締役会の議事録
- (ア)新株発行による増資をする旨の決議
新株を何株発行し、その株式の種類、1株の価格(もしくは最低価格)、割当する期限が1年以内であることを決議しましょう。
- (イ)株主総会開催日時の決定
(ア)の項目を決議するための株主総会をいつ、どこで、何時から開催するのかを決議しましょう。
- (ウ)株主総会付議事項の決定
(イ)の株主総会で付議する事項(ア)を決議しましょう。
【要チェック】
ここでよくある失敗パターンは、新株を発行して株式総数が増加することにより、定款に定めてある発行可能株式数を超えてしまうケースです。その場合には、定款の発行可能株式数の変更もあわせて株主総会に付議しましょう。
手順2. 株主総会の議事録
株主総会で無事決議されたことが分かるように、その議事録をつくっておきましょう。
【要チェック】
新株の発行については、出席株主の有する議決権の3分の2以上の賛成となります。
調達活動に必要な資料
資金調達活動をするにあたって、最低限これを用意しておかないといけないというものをまとめます。つまり、事業会社やVCに貴社の案内や事業説明をするにあたって必要最低限の資料です。これが出揃ってない場合でも、いずれ提出要請を受けることになりますので、準備しておく必要があろうかと思います。
- (ア)事業計画資料(会社概要・役員略歴・短期利益計画・中期利益計画・投資計画・資産計画・短期資金繰り計画・資本政策)
事業計画の説明はこちら
- (イ)登記簿謄本
- (ウ)定款
- (エ)過去3期分の決算書類・事業報告書・計算書類
- (オ)過去3期分の納税申告書(写し)
- (カ)当期の月次試算表(PL、BS、製造原価明細、CF)
- (キ)当期の利益計画に対しての予算実績の対比表
- (ク)監査法人による監査報告書、もしくはショートレビュー報告書(ある場合のみ)
- (ケ)前項で記載した取締役会ならびに株主総会の議事録