これを読んでいただいている皆さんの会社はいかがでしょうか。社長が営業優先で管理面をないがしろにしていることはありませんか。管理部門長は社長の言いなりになって事務だけをやっていることはありませんか。管理部門長は営業に振り回されてばかりいませんか──。
伸びる会社は、営業だけが強いのではなく、また、管理部門だけが強いわけでもありません。お互いが対等の立場で、非常にいいライバル関係になっている傾向があります。そして、上場審査時にも、社長と営業部長と管理部長はCEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)などと表現されることも多く、会社のキーファクターとして非常に厳しいヒアリングを受けることになります。
企業の評価、とりわけベンチャー企業の評価というのは、「成長」と「継続(ゴーイングコンサーン)」の2点であると言えます。そして、成長をひっぱるのがビジネスモデルと営業力であるのに対して、継続を支えるがまさに管理部門、そしてその仕組みこそが、ベンチャーのための内部統制とも言えます。
そのような本質を思えば、内部統制という言葉は、適正な会計、会計の透明開示、といった会計中心の言葉で説明できるものではなく、とりわけベンチャー企業の場合には、そのレベルに到達するまでのルールや業務という言葉の方が重要ポイントであるはずなのです。
もっと言うと、利益がきちんと出ていない企業は、適正会計云々と言う前に、最優先してやらなければならないことがあります。具体的には、下記の通りです。
・いつ資金がショートするのか把握しているのか。
・どのタイミングでどの程度の投資をするのが適切なのか。その判断基準は。
・取引先の与信は適正なのか。
・事業計画はきちんと作っているのか。
・予算に対してのかい離は毎月把握できているのか。
・対処すべき課題は分かっているのか。
・会社の成績表を経営陣はしっかり読みこなせているのか。
管理部門はお金の入金と出金にまつわるお財布を握ることから始まります。そして、入金と出金のどちらも、しかるべき理由がなければそれを許してはなりません。たとえ社長が決めたことであっても、社長1人が勝手に決めたことはしかるべき理由としては認められません。だからこそ、稟議という面倒なルールが会社には存在しているわけです。
こうした管理面の仕組みがしっかりしている(管理部門が強い)企業は、その会社へ資金や事業協力という形で投資をする人にとって、非常に重要なポイントとなります。逆に、管理面のゆるい会社へは資金を投じづらいのです。つまり、管理面のしっかりした会社には、資金が集まりやすいと言えます。
管理部門の強化は、会社としての適切な組織管理体制を実現することから始まり、そしてその結果、社外と取引や資金調達というベンチャー企業にとって切り離せないステージへ向かうための、大きな武器になります。この武器を手に入れることこそ、ベンチャー企業にとっての「内部統制の整備」ということの目的であることをイメージいただきたいと思います。
次回からは、ベンチャー向けの内部統制の具体的な事務処理について、サンプルデータなどを用いながら説明していきたいと思います。
※本コラムは毎週金曜日(祝日を除く)に掲載します。
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