ともに歩もうとする決意促すのは、「志」の高さと柔軟性 - (page 4)

勝屋氏:おふたりがVCをやっていて、嬉しかったこと、逆につらかったことは何ですか?

鈴木氏:一番嬉しかったことは、なかなか投資させてもらえずやっとのことで投資ができた会社の社長にその会社の上場翌日、「投資をしていただき、本当に良かったと思っています。ありがとうございます」と言われたのが心に響きました。何度も投資を断られたのに、アライアンスの提案をしたり、広告関連の支援などをさせてもらったりして、やっと投資させてもらった会社にそう言っていただけたのはすごく嬉しかったですね。しかもそれを私に直接言うだけでなく、他の経営者に勉強会などで話してくれてたみたいで。

 あと、この仕事を始めて1年目くらいの時に「女性のくせに」みたいなことを言われたことがあったんですが、最近、他のVCさんからその人がわたしのことを褒めていたという話を聞いたんです。私のことを当時は認めてくれなかった人が認めてくるようになったのはやっぱり嬉しかったです。

勝屋氏:それは鈴木さんの情熱と人柄、それから継続して頑張ってきたことが認められたのかもしれませんね。

鈴木氏:逆につらかったことは、投資先の社長が同社の経営状態が悪化した際に、コミュニケーションをとるのが難しくなっていったことです。経営状態が悪くなった時こそ、キャピタリストとして何か力になれないかと思い、顧客のご紹介などをしようと努めたのですが、その社長とコミュニケーションがとりづらくなりました。

 経営者は経営が悪化するとそのことをVCに説明するのを避けたりすることもあると思いますが、私はそのようなときこそ経営状態を把握し、VCとしてなにが出来るかということを話し合っていきたいと思っています。このようにキャピタリストと経営者の信頼関係を築くにはお互いの努力が必要だと感じております。

勝屋氏:女性なりの視点の鋭さもあると感じているんですが、とくに女性の観点からベンチャーキャピタルという仕事をどう捉えていますか。

鈴木氏:この仕事は投資先を見極める力はもちろん必要なんですが、小さな積み重ねが実績につながる仕事だと思うんです。そういう意味では女性の気配りなど、性格的にも女性に向いている部分は多いと思います。最近ではクチコミビジネスなどが流行っていますが、そういう分野は女性が支えているとも言えます。ですから女性の感性も十分に活かせる仕事だと思うので、もっと女性にも興味を持ってもらいたいですね。ただ、実績を出さないと生き残っていけない仕事なので、男性以上の頑張りは必要だと思います。

勝屋氏:では最後に、渡辺さんは将来、ジー・プランをどんな会社にしていきたいと思っていますか。

渡辺氏:ポイント事業をやっているので、世に中のあらゆるところにGポイントがあふれる世界を作りたいですね。あと、組織としては、ジー・プランの中で働いている人間が成長できることも大事だと思うので、そこも目指していきたいと思います。

勝屋氏:西條さんはサイバーエージェント・インベストメントをどういうベンチャーキャピタルにしていきたいと思いますか?

西條氏:特化型のVCというスタンスは守りたいと思います。その上で大きな成功事例を作りたいですね。大学生がこれから始めようというくらいのシード段階からきちんと投資をして、日本ならミクシィとか、アメリカならGoogleやYouTubeのような、爆発的に成功する事例を出して、実績のあるVCになりたいです。

 今、ネット業界はアイディアが出尽くした感じがありますが、一方、ミクシィなどもそうですが、短期間で爆発する事例も1年に1〜2本ありますよね。そういう意味ではこれからが面白いのかなと思ってます。とにかく短期間で大成功という事例が増えると思うんです。

 それはユーザーのリテラシーが上がっているのと、ブログやクチコミサイトを中心として、本質的に良いものをみんなが知る機会が格段に上がっているということだと思うんですよね。ですからそこでいち早く実績を出して、成功事例を作りたいと思います。

対談での氣づき 〜 勝屋 久(IBM Venture Capital Group)

 コーポレートベンチャーの目的を大きく3つに分けると事業シナジー・情報収集・フィナンシャルリターンがあげられる。その中でも事業シナジー〜投資する側の企業、投資をうける側のベンチャー企業とのアライアンスが一番のポイントとなる。

 今回のケースでは鈴木さんの事業部門のオペレーションの経験に基づいた出会いと氣づきにはじまり、実際にユーザーとして、ジー・プランを客観的に評価した点が印象的だった。ベンチャー企業を単なるフィナンシャルバリューだけで評価するのではなくトコトン、ユーザー・市場の視点による、その企業が提供するサービス・製品・メディアでのビジネスの可能性の評価がとりわけアライアンスを成功させるために大切だとあらためて感じた。

 また、投資後にも鈴木さんが汗をかいてポイント提供先の紹介、事業部で勉強会などおこない、信頼関係の構築とリアルのビジネスのサポートをおこなった。企業文化の違う両社の関係を良くさせようと行動は実は至難の業だ。それを地道に鈴木さんが行ったことも素晴らしい。

 そしてインターネットビジネスは効果的なマーケティング手法の一つとして今後も数多くの事業会社とベンチャー企業のアライアンスのチャンスはいっぱいあると思うが、実際に手掛ける人のビジネスセンス・徹底的にお客様・市場の視点・熱い思い・人となり・地道なオペレーションがキーポイントになる。

 サイバーエージェント・インベストメントについて感じることは西條さんと鈴木さん他の皆さんと接していて、若さも勿論ありますが、VCが大好きで情熱がある自由闊達なメンバーで組織されているなと思います。また西條さん自身の魅力も大きい。2004年11月22日に初めて、彼にあったときの印象は鋭い洞察力・先を見る力があり、発想が豊かな人だなと思った。2年半たった今も衰えることはなくむしろ加速している。これが当社の鋭い目利き力につながっていると感じます。今後の彼らの活躍がとても楽しみです。

IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation, Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。総務省「情報フロンティア研究会」構成員、経済産業省「Vivid Software Vision研究会」委員、New Industry Leaders Summit(NILS)プランニングメンバー、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小ITベンチャー支援事業」のプロジェクトマネージャー(PM)、富山県立大学MOTの講師などを手掛ける。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」を手掛けている。

ブログ:「勝屋久の日々是々

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)

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