同センター所長のRobert Full教授によれば、同校のLife Sciencesビルに本部を置くCiberには、機械工学、心理学、統合生物学、生物工学など、複数の分野にまたがる24以上の学部の専門知識が結集されている。
バークレー校は、この分野の研究で先攻してきた。
例えば、バークレー校の科学者たちは高感度赤外線センサー開発のため、タマムシを研究している。タマムシは、その感知器官を使って最大50km離れた熱波を検出できる。その能力を利用して、焼け朽ちた木を探し、卵を産み付ける。米軍も同様に機能する赤外線センサーを持つが、このセンサーは氷点下でないと機能しない。一方タマムシは常温下でこの能力を発揮している。科学者たちは、この感知器官の機能の解明に取り組んでいる。
バークレー校ではまた、重力をものともしないヤモリにヒントを得て、さまざまなマイクロファイバーを開発してきた。これらのマイクロファイバーを使うと、ほぼ垂直の斜面に物を置いても滑り落ちない。
「バイオミミクリーが再現するものは、生物の形状、プロセス、そしてエコシステムだ」(Benyus氏)
バイオミミクリーによって、生物学上の発見が新しい思考方法に変わる。例えば、MR3 SystemsのメディカルリサーチャーであるIrving DeVoe博士は、バクテリアによる金属、特に鉄の腐食の仕組みを理解するため、細菌性髄膜炎について研究していた。博士は、バクテリアの分子を文字通り模倣したフィルターを作成して、わずかな量から特定の金属だけを抽出するシステムを構築した。Benyus氏によれば、この研究から排水処理または埋め立て処理の新しいろ過プロセスが期待できるという。
また自然は、設計上のヒントだけでなく、最良の適応例を示してもくれる。例えば、オーストラリアの科学者グループは、微生物がスライム状に集積される、いわゆる「バイオフィルム」の増殖を抑制する有機体について調査した。その結果、紅海の海藻がバイオフィルムの細胞膜を除去する分子を放出して、海藻をきれいな状態に保っていることがわかった。この現象については、BioSignalという企業が、船舶の塗装面やコンタクトレンズなどの湿度が非常に高い場所での応用に注目している。
Benyus氏によると、バイオミミクリーにおいて最も困難かつ重要な研究分野は、自然のエコシステムであり、自然界のさまざまなシステムがいかに自足しているかを調査することだという。例えば同氏の抱える疑問には、「将来的にも二酸化炭素を排出せずに、現在の二酸化炭素を利用してエネルギーを確保するにはどうすればよいか」というものがある。
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