また、この仕組みは広告主にとってもメリットが大きいと中橋氏は話す。表示順位が固定されている検索連動型広告では、他社より広告が上位に表示されるようにするために、常に他社の価格を把握してより高い金額を入札する必要がある。この確認作業が、広告主に大きな負担となっている。これに対し、サーチテリアの仕組みであれば、一定の割合で広告が最上位に表示されるため、確認作業の負荷を減らせるという。
「モバイル広告市場はインターネット広告市場の10分の1の規模しかない。その程度の規模で、PCサイト広告並みの手間がかかるようでは、誰も広告を出稿しなくなってしまう。なるべく広告主が手間をかけなくてもすむような仕組みが重要だ」(中橋氏)
サーチテリアでは広告主の負担を減らすため、入札キーワードの管理にも工夫を凝らしている。検索連動型広告の場合、広告主は自分が広告を出したい検索キーワードを選び、1つ1つのキーワードに対して1クリックあたりの広告費を決める必要があるが、中橋氏は、この作業が広告主の大きな負担になっていると指摘する。
「例えばアルバイトに関する広告を出したい場合、『アルバイト』『バイト』『日雇い』『ばいと』など、検索されそうなキーワードをいくつも考える必要がある。特に人気のあるキーワードは広告単価も高いため、他社が思いつかないようなキーワードをいかに考え出すかが勝負になる。さらに、その1つ1つのキーワードについて、入札した広告単価が他社より高いか低いかを常にチェックする必要がある」
実際、中橋氏はオーバーチュア在籍時にこの業務を担当しており、非常に苦労したという。そこでサーチテリアでは、キーワードをあらかじめ用意して350のカテゴリに分け、広告主は広告を出したいカテゴリを指定するという形にした。
「広告主がやるのはキーワードを考えることではなく、どのカテゴリに出したいかを決めること。カテゴリ単位にすることで、管理が大幅に楽になる」(中橋氏)
また、適切なキーワードをサーチテリアが用意することで、広告を掲載するキーワードの漏れがなくなるのも大きなメリットだとした。「これまではキーワードを考えつかない企業は、検索のロングテールをつかめなくなっていた。当社がキーワードを用意し、常に更新しているので、圧倒的にヒット数が高まる」(中橋氏)
サーチテリアではこれらの仕組みをビジネスモデル特許として出願中だ。2006年5月時点でサーチテリアの広告を掲載するサイトは160社、広告主は800社を突破した。1年前に比べると提携サイト数は約3倍、広告主は2倍以上になっている。
ただし、モバイルサイトにおける検索の利用はあまり進んでいないのが実情だ。そこで、サーチテリアでは検索ボックスを利用しない広告の表示方法についても工夫を凝らす。
具体的には、モバイルサイト上に「<PR>アルバイト」のように、カテゴリの内容をテキスト広告として表示する(画面2)。このリンクをクリックすると、カテゴリに連動したサーチテリアの広告が表示される。
「ただ広告を表示するだけでは、検索連動型広告に対する広告主の期待からは外れてしまう。検索連動型広告は、特定のカテゴリに関心を持っている人に広告を表示するから費用対効果が高い。そこでカテゴリリンクをクリックさせることでその内容に関心のある人だけを抽出し、広告を表示するようにしている」(中橋氏)
今後は、モバイルサイト向けにコンテンツマッチ広告も提供する予定だ。コンテンツマッチ広告とは、サイトの内容に近い広告を自動的に表示するというもので、GoogleのAdSenseが有名だ。
「モバイルサイトはPCサイトに比べて情報量が少ない分、余計な情報が入っていないのでコンテンツマッチ広告は出しやすい。否定的な内容の記事には広告を出さないといった調整に力を入れて開発していく」と中橋氏は話す。
ただし、モバイルサイトではJavaScriptを使うことが難しいため、実際にサービスをするにはブログやウェブサイトの運営者などと組む必要があるとした。
また、PCサイト向けの検索連動型広告についても検討しているという。ただしPCサイトではすでにOvertureやGoogleが大きなシェアを握っていることから、「検索サイトではなく、さまざまな情報サイトに技術を提供して、収益を折半するモデルがいいのではないか」とした。
日本で生まれたモバイル検索連動型広告だが、サーチテリアでは世界展開も視野に入れている。「日本のモバイル広告市場でうまくいったものを海外に持って行きたい」と中橋氏は意欲を見せた。
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