そのほか、Silverofficeという新興企業でも「gOffice」というOfficeに似たウェブアプリケーションを開発中だ。同社のウェブサイトでは文書作成や印刷を行うことができ、またオンライン版の表計算ソフトウェアやプレゼンテーションソフトウェアも間もなく提供される予定だ。また、Silverofficeの創業者でCEOを務めるKevin Warnockは、文書をAdobe Systemsが開発したPDF形式に変換するサービスを1月から開始すると話している。
gOfficeアプリケーションは、広告収入を確保しながら、ユーザーには無償で提供されている。同社では、サブスクリプション形式のgOfficeを、広告表示を望まない企業顧客などを中心に配布していくという。現時点での登録ユーザー数は「5ケタ」に及んでいるが、同社は米国以外のユーザーも獲得して、これを200万人にまで伸ばしたいと考えている。
もっとも、Silverofficeの目標はMicrosoft Officeを駆逐することではない。
Warnockは、「(gOfficeは)Officeスイートと今後も共存していけるだろう。双方が互いを追い落とす必要はない」と述べている。Microsoftの「Outlook」が多くのPCにあらかじめインストールされていても、HotmailやGMailのようなウェブベースの電子メールを使用するユーザーが存在していることに、同氏は言及している。
Warnockが率いるSilverofficeは従業員15名ほどの企業だが、AJAXとウェブ配信モデルを活用することで「自力での成功」が可能になったという。「資金を調達することなしに、大勢の人々の目に留まる実践的な道を選んだ」(Warnock)
対象は消費者から企業へ
Writely、gOffice、それに37Signalsの開発する予定リストや個人情報管理(PIM)ツールなど、ウェブベースの生産性アプリケーションやインスタントメッセージングアプリケーションは、主に一般消費者向けのものだ。しかし、IT企業の幹部やアナリストらは、AJAXで開発されたウェブベースのアプリケーションが与える影響は、企業向けアプリケーションにも波及するだろうと予測している。
企業は、AJAXを利用して既存の企業ウェブサイトのインタラクティブ性を向上させたり、XMLベースのデータ転送機能を使って、複数のソースから情報を集めて組み合わせる「マッシュアップ(mash-up)」サイトを構築したりすることが可能だ。たとえば、学校の所在地情報を収集し、不動産業者のウェブサイトに物件情報とともに表示することなどが可能になると、Monson-Haefelは述べている。
電子メールおよびカレンダーアプリケーションを提供する新興企業Zimbraで、CTO(最高技術責任者)を務めるScott Dietzenは、金融サービス企業や通信事業者が求めるリッチなユーザーインターフェースを備えたソフトウェアなどのBtoBアプリケーションに、AJAXが大きな影響を与えるはずだと考えている。同社の企業向け製品では、データ交換にAJAXを多用しており、例えばカレンダーの予定欄にある待ち合わせ場所をGoogle Mapsに表示できるという。
AJAXのユーザー企業であるIconix Pharmaceuticalsは、AJAXとGeneral Interfaceのツールキットを併用してきた。Iconixは現在、統合ソフトウェアプロバイダーのTibcoに買収されている。Iconix Pharmaceuticalsは、薬の作用を検証するための大規模なデータベースと先進的なフロントエンドを持つアプリケーションを開発し、これを製薬各社の技術者向けに提供している。
AJAXを用いることで、同社は複雑なユーザーインターフェースを開発し、複数のデータソースを連係させられるようになった。同社の情報科学担当バイスプレジデントAlan Roterは、ウェブベースのアプリケーションであれば、情報をインターネットを介して配信することも、イントラネット上にインストールしておくことも可能だと話している。
「ウェブベースのユーザーインターフェースを採用しなければ、シッククライアントを用いて任意のクライアントサーバインターフェースを実装し、レンダリングのための作業をすべて実行する必要が生じただろう。ウェブベースのUIの利点は、インストールが不要ということだが、これはほんとうにすばらしい特性だ」(Roter)
Roterは、TibcoのAJAXツールは洗練されており、他の言語に比べて開発期間が短くて済むと述べている。しかし一般的には、AJAXツールはまだ既存製品ほど成熟していないと、アナリストは指摘する。
Monson-Haefelも、商用AJAXツール市場の「生態系」はいまだ確立されていないと言う。とはいえ同氏は、Adobeが提供するMacromediaのツールやMicrosoftのツールと同様に、AJAXもいずれは開発技術の主流となるだろうと見ている。
一方、WritelyのSchillaceは、AJAX人気が高まったことで、当面はウェブページにおけるインタラクティブ性が過度に追求される状態が続くと予想する。実際に、AJAX技術が過剰に用いられた結果、インタラクティブではあるものの安全性の低いウェブページが乱立し、そうした事態に対する反動が生まれることを懸念する企業幹部やアナリストもいる。
「AJAXは万能薬ではない」と、ZimbraのDietzenは話し、複雑な表計算やプレゼンテーション用のアプリケーションなどには、デスクトップ上のデータ格納領域が必要になる点を指摘している。「リッチなインタラクティブ性が求められる従来のウェブアプリケーションを強化するのはすばらしい。だが、すべてのウェブアプリケーションがリッチなユーザーインターフェースを必要としているわけではない。そして、それを必要とする場合は、AJAXが現時点で最良の選択肢だと言える」(Dietzen)
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