河野:こういった一般的な話とは別に具体例に引き寄せて話をしたいのですが、高須賀さんは実際に起業して、どういった部分で苦労されましたか。
高須賀:想定通りにならないという点では苦労しました。当初は中小企業をターゲットにインターネットダウンロード直販でグループウェアを提供しよう思っていましたが、中小企業ではなく大企業の“部門”がターゲットになったり…。想定外のことにスピーディに対処という苦労がありました。
ただ、グループウェアという概念は10年前からありましたから、グループウェアのバリューをお客様にご理解頂く為の説明コストは必要ありませんでした。インターネットダウンロード直販はソフトウェアのビジネスで一番儲かる効率的なビジネスモデルだと思います。お客様が導入や設定などを行っていただけるますから。そういう風に考えると、2番手商法でニッチを突く場合、インターネットダウンロード直販はベンチャー向きだと思います。
河野:製品特性からすると、高須賀さんのケースと谷本さんのケースは対照的と思うのですが、今の論点について谷本さんはいかがですか。
谷本:私は逆に製品を簡単にわかりやすく説明することに腐心しています。我々はナレッジマネジメントという狭い分野に特化して、顧客に使い方を説明するというところまでを含めたサービスとして提供しています。大手企業がなかなか説明できないことを我々ができたために成功したのだと思っていますが、比較できる商材がないというのは非常に苦労しますね。今後はパートナー企業も我々と同じ説明ができるようにしないといけないと思っています。
大手企業と組むことで市場が広がる
河野:ベンチャー企業が成長する上では、競合・協業両側面からみて大手企業との付き合い方も一つの課題になると思いますが、そのあたりはいかがでしょう。
勝屋:弊社としても特定分野のスキル・豊富な知識・魅力的なソリューションをもったベンチャー企業様との協業は戦略的にも大変重要と考えております。2年前にグロービスキャピタルパートナーズの仮屋園パートナー様からリアルコムの谷本社長様をご紹介いただき、谷本社長の魅力にもひかれ、協業をトライしたのですが、当初はなかなかうまくいかなく苦労しました。ただ今年の初めから弊社のLotus Notes/Domino 6上でリアルコム様の製品を短期間で実行可能にしていただき、協業が開始しました。弊社にとってLotus Notes/Domino 6へのバージョンアップ促進というシナリオが描け、具体的なWin−Winの関係(相互に売上をあげる関係)が構築できたことがうまくいった理由の一つです。もう一つは弊社のLotus事業部長(製品責任者)とソフトウェアパートナー担当が協力に社内外にリアルコムの製品を推進したことも大きい理由と感じています。現在、大手銀行などで協業をさせていただいております。
谷本:大手との協業というのは、市場のカバレッジを広げる上で有効な手法だと思います。我々のようなベンチャーでは、5000万円〜1億円規模の案件パイプラインを多数獲得する事はなかなか困難ですが、IBMなどと組むことで可能になります。
河野:これまでの話はあくまで事業サイドからの議論でしたが、投資家サイドの中野さんから見て、ソフトウェアベンチャーを見るポイントはどこにあるのでしょうか。
中野:プロダクトの利益が出るまでにどのくらいかかりそうかというのが大きなポイントですね。例えば3〜4億円を投資して2年で製品を完成させても、その時点で資金が底を突いてしまうことはよくあります。製品完成後にマーケティングを行う必要があり、しばらくは売上がゼロという状態が続くことになってしまう。VCから見ると忍耐力が必要な事業モデルだと言えます。
米国でなぜプロダクト型企業が多いかと言えば、プロダクト型企業に対するVCの資金投下規模や時間軸が日本とは違うのではないかと思います。米国のプロダクト型企業は最初から世界市場をターゲットにしています。ただ、VCも日本よりも大きな投資を行う。日本の場合は小さな投資規模で、小さな市場を対象にしている。例えばおそらくプロダクト完成後2年経っても利益がでないようならば、VCとしては追加投資は難しいでしょう。ですから、派遣や受託開発等のサービス事業でベースカーゴをつくり、その上でプロダクトも手がけてリスクヘッジを行うというモデルが、日本では良いのではないでしょうか。
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