IntelとAppleとの蜜月は、どうやら苦い結末を迎えたようだ。
台北で開催された「Intel Developer Forum」(IDF)に関するZDNet Australiaのレポート記事によると、Intelの幹部は、同社のチップを採用していないことを理由に、「フルインターネット機能」を提供していないスマートフォンの典型例の1つに「iPhone」を加えることに決めたようだ。ARMベースのチップはインターネットを利用するには力不足だという、もっともらしい主張をIntelが繰り広げるのは今に始まったことではない。だが、iPhoneをやり玉に挙げるのはこれが初めてだ。
Intelは、ARMとの対決姿勢をあらわにすることで、次世代モバイルコンピュータ市場に進出を図ってきた。ARMが開発したコアは、全世界の携帯電話の90%以上に採用されている。Intelでは、PCベースのインターネット体験が同社のx86アーキテクチャによるものである以上、次世代の高性能モバイルコンピュータ向けのソリューションはx86アーキテクチャしか考えられないと主張している。
だが、Engadgetが指摘するように、iPhoneについてさまざまな不満があるとしても、「フルインターネット機能」を提供できないことを不満点に挙げる人はほとんどいないはずだ。おそらく、iPhoneのインターネット機能に関してもっともよく批判されているのは、Flashコンテンツに対応していない点だろう。だがこれは、ARMプロセッサの技術的限界というより、「Flash Lite」はiPhoneには十分ではないという、Appleの最高経営責任者(CEO)Steve Jobs氏の見解によるところが大きい。実際、AppleがiPhoneへの搭載を認めたら、AdobeはすぐにでもiPhone対応のFlashプレーヤーをリリースできる状態にあると考えられている。
2007年にIDFの基調講演で初めてこうした主張を行った際、IntelはARMベースのスマートフォンはウェブブラウジング中にエラーが発生しやすいと非難しつつも、関係者に迷惑をかけたくないとして、「PowerPoint」スライドで例として使用したスマートフォンの名前を公の場で挙げるのを拒んだ。Intelは当時、スマートフォン向け次世代チップの「Moorestown」がリリースされれば、将来的にAppleを同社側に取り込めるものと踏んでいたとみられる。このころ、Intelは新たな取引相手であるAppleにいまだに夢中で、Appleと比べれば、昔から取引のあるDellやHPはひどく時代遅れの企業に見えたはずだ。
だが、AppleはIntelがMoorestownをリリースするのを待たないことに決め、チップ開発会社のP.A. Semiをさっさと買収してiPhoneと「iPod Touch」向けにARMアーキテクチャをベースとする次世代CPUを開発させることにし、同アーキテクチャへの傾倒をいっそう深めた。その後、Appleはさらに一歩踏み込んで新型「MacBook」ではIntelの統合グラフィックチップセットを採用しないという決断を下し、Intelが競争力のあるグラフィックチップセットを開発するまでにはまだ長い道のりがあることを(またもや)浮き彫りにした。
こうした経緯から、iPhoneは突如として、IntelのShane Wall氏が言う機能が不十分なスマートフォンの典型例としてやり玉に挙げられることになった。「それなりの処理能力が必要なすべてのアプリケーションについて、iPhoneはその処理に手間取ってしまう」とWall氏は述べている。
だが実際のところ、開発者や顧客、携帯電話事業者はこの点についてさほど困っていないようだ。InquirerのPaul Hales氏の発言を借りれば、「ARMベースのチップを採用しているモバイルインターネット機器は10億台を超えるが、Intel製チップを搭載しているものなんて、6台がいいところだろう」というのが現状だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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