“原音探究”の理念から生み出された高音質なヘッドホン
さらに「HA-FXC71」と「HA-FXC51」では新たに振動板にカーボン素材が採用されています。
はい、振動板の素材にも、今回は非常にこだわっています。アルミをはじめ、様々な素材を試したんですがカーボンが今回求めた音にベストな素材と思っています。カーボンは比重が小さくて、弾性率が高い素材でして、小さい入力信号でも反応しやすいんです。加えて、硬さもあるので振動板が動く際も波打つのではなく、まっすぐ動くんですね。ですので、分割振動も抑えられるわけです。低域の波がくっついて団子状になっているとモコモコとした音となってしまいますが、カーボンを用いると立ち上がりが良く、はっきりとした輪郭を持つ低音になりました。
それにしても、このカーボン振動板も耳に入るだけあって、本当に小さいですよね。振動板を成形するのはもちろん、「マイクロHDユニット」に搭載するのも高い技術力を必要としたのではないでしょうか。
「マイクロHDユニット」は直径が5.8mmで、薄さが6ミクロンになります。その一部を構成するカーボン素材の振動板をドーム状に成形するのは機械で行えるのですが、ユニットに入れるのは手作業なんですよ。まずボイスコイルがついた振動板をユニット内に入れて、その上からマグネットとヨークを重ねて、最後に基板を入れてからハンダ付けしてユニットを閉じます。すべて顕微鏡を使っての手作業となります。ですので、大量生産には向いていないかもしれません。でも、振動板を耳穴深く差し込むためには、人の手で作業するしかないんですよね。
その手間と工夫が、この澄んだ音を実現させているのですね。
そうなんです。ただ、それだけでは完成品のような音が出ないんです。更にはユニットホルダー内のフィルターや、吸音材の材質も吟味して理想とする音に近づけていったんです。当初は低域が出づらかったり、高音がキンキンとしていましたね。「HA-FXC71」はいわゆる高級機への入門となるような、良い音で聴くことの喜びを知ってもらえるモデルとして位置付け、低域から高域までバランスのよい音を聴けるように意識しました。一方、「HA-FXC51」はどんな人でも聴きやすいように高域と低域に張りがある傾向でまとめたようとしたんです。高音のリアル感や、力のある低域を導き出すために吸音材は4種類。フィルターも3種類くらい素材を試しました。さらに空ける穴の位置や大きさも変えながら、マトリックスに試行錯誤しながら現在の音の鳴りへ近づけていったんです。
カーボンの採用以外に前モデルとの相違点はありますでしょうか。
ハウジング部の後ろにスクリーンメッシュを入れて開放したことも違いですね。開放したことで振動板が動いたときに空気が抜けやすくなって、音の入力信号に忠実に動くようになりました。より臨場感あふれる音になったと思います。
製品スペック紹介
再生周波数帯域:8Hz〜25,000Hz
質量:6.2g(コード含まず)
コード:1.2m(Y型)、φ3.5mm 24金メッキステレオミニプラグ付
付属品:シリコンイヤーピースS、M、L 各2個、 コードキーパー、クリップ、キャリングポーチ
著者プロフィール
洋楽を中心に執筆している音楽ライター。音を聴くという仕事柄、ヘッドホンをはじめとするオーディオ機器にも関心が深く、デジタルグッズ系雑誌でオーディオに関する記事も書いている。
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