情報セキュリティにもクラウド技術を応用する時代

トレンドマイクロ株式会社
プロダクトマーケティングマネージャー
坂本健太郎氏

　「今、企業にとって本当に必要とされているセキュリティ対策は、新たに登場する脅威に常に対応できるスピード、パターンファイル方式に頼らない新たな技術、そしてネットワークの負荷増大による追加投資を避ける工夫である」と語るのは、トレンドマイクロのコンシューマ＆SBマーケティング部で中小企業向け製品のプロダクトマーケティングマネージャーを務める坂本健太郎氏だ。

　「セキュリティはアプリケーションも重要だが、大切なのはその背後で動くデータ」だと指摘する坂本氏は、クラウドコンピューティング技術を情報セキュリティにも応用すべきと提案する。

　脅威が次々に発生し、そのふるまいも見えにくくなっている中で、従来のような1日1回パターンファイルをダウンロードする方法に頼ったセキュリティ対策では全く不十分。今後はクラウド上のデータベースで脅威に関する情報がリアルタイムに更新され、ユーザーはいつでも最新の脅威に関する情報を利用できるクラウド型セキュリティサービスが必要だという。

独自のレピュテーション技術でWeb上の脅威に対応するSPN

　そんなクラウドを活用したトレンドマイクロの中核技術が、「Trend Micro Smart Protection Network」（以下、SPN）である。レピュテーション技術自体はすでに多くのベンダーが活用し、脅威に対する一般的な手法とされているが、トレンドマイクロの場合は、Webレピュテーション、ファイルレピュテーション、Eメールレピュテーションの各技術を含むクラウド上に1つの巨大なレピュテーションデータベースを構成。常に相関分析を行うことでお互いにデータを反映し、危険なWebサイトへのアクセス、危険なファイルの使用をいち早く防ぐことを目的としている。

　また、日々増え続ける脅威によってパターンファイルの肥大化が問題となっているが、トレンドマイクロの場合は、SPNのファイルレピュテーションを利用した「スマートスキャン」という機能によって、パターンサイズを50％弱軽減し、企業内ネットワーク負荷を平準化する。さらに、次々と発生する亜種を予測する「ジェネリックパターン」をクライアント側に置き、そこで判断できなかった脅威に対してのみ、クラウドにあるスマートスキャンサーバに問い合わせに行くことによって、PCのメモリへの負荷も最小限にコントロールすることができる。

図2　「Trend Micro Smart Protection Network」（SPN）はクラウドに設置した巨大なレピュテーション(評価）データベースを使い、危険なメールの受信、危険なWebサイトへのアクセス、危険なファイルのダウンロードや実行などを事前防御する（クリックで拡大画像表示）

図3　「スマートスキャン」の概要と有効性（クリックで拡大画像表示）

iPhoneおよびiPod touchでもWebレピュテーションを体験

　一方、Webレピュテーションは、日々監視・更新される不正Webサイトの評価データベースを元にリンク先をチェックし、フィッシング詐欺や危険なWebサイトへのアクセスを未然にブロックする。

　このWebレピュテーションを一般にも体験してもらうために、トレンドマイクロではアップルのiPhoneおよびiPod touch向けのブラウザも開発している。それが「Smart Surfing for iPhone and iPod touch」だ。

App Storeでダウンロードできるこのブラウザは、SafariのエンジンにWebレピュテーション機能を埋め込み、Web接続をするときに接続先URLをトレンドマイクロのレピュテーションデータベースに参照するようになっている。万一、不正なWebサイトにアクセスを試みた場合は即座に接続が拒否され、アドレスとともに拒否された理由、Webサイトのカテゴリが表示される（現在のところは英語表示のみ）。またその強度も、ほとんどの脅威をブロックできる「High」から、最低限のフィルタリングしか行わない「Low」まで、目的に応じて切り替えることができる。