日本マイクロソフトのSmart Storeは、流通・小売業のデジタル化を支援する一連の施策だ。そのSmart Storeに新たに加わったのが、AWL株式会社が開発するAIカメラをベースにした、カメラリファレンスアーキテクチャだ。この記事では、Smart Storeが目指す小売の未来や、カメラリファレンスアーキテクチャが店舗にもたらすインパクトについて探る。関連して、12月12日に開催されたSmart Storeのセミナーの模様もレポートする。
Smart Storeとは、Microsoftがグローバルで掲げる「Intelligent Retail」の国内版として、日本の流通・小売業のデジタル化を支援する施策だ。技術者育成、新規ビジネス開発支援、そしてそれらの基礎となるリファレンスアーキテクチャの三本柱の施策を通して、迅速で柔軟なサービスの提供、顧客・店舗データ利活用の促進といった次世代の流通小売業に求められている姿の実現を支援する。
「小売の業態は、ここ数十年変わっていません。しかし、そこにインテリジェントなデジタル技術が入ると、顧客体験は大きく変化し、利用者にもっと価値を感じて頂けるようになります。そこで小売のデジタル化を、マイクロソフトとパートナーの技術で支援するのがSmart Storeです。」そう語るのは、日本マイクロソフトの岡田義史氏だ。
小売のデジタル化にあたり、多くの企業は次の3つのニーズを抱えている。
それらのニーズに応える要となる施策が、Smart Storeリファレンスアーキテクチャの無償提供だ。リファレンスアーキテクチャでは、決済ソリューションや、在庫管理ソリューション、さらに今回新たに加わったカメラソリューションなど、流通・小売の業務シナリオに沿って、次世代の店舗に欠かせない核となる共通部分の実装のモデルケースが提供されている。リファレンスアーキテクチャーは、ソリューションごとにユースケースやサンプルアプリ、アーキテクチャガイドから構成され、オープンソースとしてGitHubで無償提供される。いわば、技術とビジネスを繋ぐ参考書として活用することができる。
リファレンスアーキテクチャを参照することで、事業者はデジタルによる新規ビジネスの差別化に集中し、イノベーションを加速することができる。新規ビジネスの開発に当たっては、マイクロソフトDigital Advisorによるデジタルトランスフォーメーション計画化支援を受けることもできる。またパートナー企業は、システム開発期間の短縮、開発・運用・保守コストの削減といったメリットが得られる。合わせて提供される、リファレンスアーキテクチャをベースとした技術トレーニングと組み合わせれば、実際に次世代の店舗のシステム作りを体験し、技術的知見の蓄積や、デジタルを活用できる人材の育成にも繋がる。
「Smart Storeを通して、お客様は自分たちがデジタルで本当に実現したいことをITで裏付けられるようになります。システムを内製するにせよ外注するにせよ、判断のスピードや精度が上がり、デジタルによる新しいビジネスが生まれやすくなります。」と岡田氏は語る。
Smart Store リファレンスアーキテクチャの背景には、小売のデジタル化を阻む要因を解決したいという思いがある。主な課題は2つある。すなわち、単一のソリューションの施策では、結果が出にくいこと、そしてテクノロジを活用できる人材の不足だ。
実際には多くの小売業が、既にPoC(Proof of Concept/概念実証)として、試験的にデジタルの導入に取り組んでいる。しかし単発の取り組みで終わってしまいがちで、課題解決に繋がらない。例えば、顧客と従業員と商品の動きは非常に複雑で、売り場だけスポットでデータ分析したとしても、ビジネス上有用な結果を得るのは難しい。デジタルが真価を発揮するには、バリューチェーンへの包括的な導入が必要だ。そこでリファレンスアーキテクチャは、流通・小売業の業務シナリオに沿って、決済ソリューションや、在庫管理ソリューション、さらに今回新たに加わったカメラソリューションなどを用意し、業務へのデジタルの実装を包括的に進められるようになっている。
加えて、デジタルを活用するには、クラウドを扱える技術者やITの目利きができる人材を育成することが不可欠だ。しかし現実には、IT人材を豊富に抱えている小売業は少なく、多くの企業が人材の育成を課題に感じている。システムを外注するばかりでは、自社にITのノウハウが貯まらず、デジタルの真の可能性を引き出すことができない。そこで、リファレンスアーキテクチャ は、Azureをベースにした技術を組み合わせ、実際の現場で活用するためのモデルケースを、オープンソースとして無償提供する。いわば、技術とビジネスを繋ぐ参考書だ。合わせて提供されるトレーニングと組み合わせれば、実際に次世代の店舗のシステム作りを体験し、自社への技術的知見の蓄積や、デジタルを活用できる人材の育成にも繋がる。