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AI プロジェクトの推進に必要なのは ”知恵”と”勇気”グロービス経営大学院が AI イベントを開催

グロービス経営大学院(MBA プログラム)は 2019 年 8 月 18 日、日本マイクロソフトと共に同大学院生・卒業生を対象にしたイベント「Microsoft AI Thinking」を同大学院仙台校で開催した。日本における AI (人工知能)のビジネス活用率の低さに危機感をもち、AI 導入推進を目指す日本マイクロソフトが、テクノロジーを理解しビジネスにイノベーションを起こせるビジネスリーダーの育成に力を入れている同大学院に賛同、本イベントの共同開催に至ったという。本稿では当日のイベント概要を紹介する。

ビジネスにおける人工知能 (AI) 活用の本質

「近い将来、 AI が経営に与える影響について議論してください。」

セッションは講師のこの問いかけからスタートした。

 受講者から様々な意見が出る中、講師は「AI は競争環境の変化が激しい現代において、人間では処理しきれない大量のデータをもとに高い確率で未来を予測してくれるツール。未来の予測ができれば、経営資源の最適配置を早期に行うことができるようになる。ビジネスパーソンが今これを利用しない手はない」と述べた。


 その後、インターネットやスマートフォン、クラウドの普及から5Gにいたるまで、現在の AI 普及が誘発された歴史的な流れを解説。マイクロソフトの研究開発部門であるマイクロソフト ディベロップメントが手がける人工知能関連技術の事例として、LINE や Twitter などの SNS で活躍する「りんな」を紹介。フォロワー数総計790万人にも上る「彼女」は、ニューラルネットワーク(脳の構造から着想を得た仕組み)によるディープラーニング(深層学習)によって、世界の知識や情報、さらにはユーザーの感情を学習している。この「りんな」との会話が人気を呼んでいるという。「りんな」は会話相手のリアクションに対し、相槌を打ったり、質問することを通して相手の共感を得ることで、人間との自然な会話の継続を実現している。

 「りんな」の利用例として、企業向けに提供されている「Rinna Character Platform(※1)」を用いたローソンの LINE 公式アカウント「あきこちゃん」を紹介した。例えば、「あきこちゃん」とLINE上でしりとりをすると、しりとりの流れの中で自然に商品を表示してくれたり、近くのローソンでのキャンペーン情報を教えてくれるなど、効率的に顧客指向にマッチしたリコメンドを提示してくれる。これにより、”個”客ロイヤリティ向上が見込めるという。

 また、マイクロソフト自身も社内で蓄積されたデータのトレンドや関連性に基づくファイナンスの予測データを AI によって生成、その予測に基づく迅速な経営判断の実施をしているといった活用例を紹介。加えて、日本国内のAI活用の豊富な事例とそのインパクトも紹介した。

 このような事例に共通する成功要因として、蓄積した大量かつ複雑なデータをもとに「予測をすること」が AI の本質であることを踏まえ、AI とその活用には以下の認識を持つべきであると講師はまとめた。

●予測したい事項と関連するデータを広くとる

●エンドユーザとのタッチポイントを意識するデータを収集し続けられる仕組みを考える

 では、受講者一人ひとりがビジネスにおいて、 AI を活用したプロジェクトを推進していくためにはどのような知識やスキル、マインドが必要なのか。

 必要なのは「知恵」と「勇気」。捨てるべきは「勘」と「根性」だという。

 (※1) ソーシャル AI チャットボット「りんな」を活用した新たなデジタルマーケティングソリューションを提供開始

AI プロジェクトを推進するための「知恵」

 当然だが、 AI プロジェクトを推進するには、 AI に関する知見は欠かせない。ところが今は、ビジネスサイドの人間が AI プロジェクトを推進する上では、高度な統計解析やプログラミングの知識・経験は必須ではなくなってきているという。

 例えば三重県伊勢市のゑびや大食堂には、SI (システム・インテグレーション)部門として株式会社 EBILAB がある。かつて、食堂でウエイトレスをしていた女性が、パソコンを購入してタイピングを学びながら本や動画サイト、学習サイトなどを活用して独学で機械学習にチャレンジし、一か月ほどでデータ分析の分野で活躍するようになったという(※2)

(※2) 株式会社 EBILAB 秋吉しのぶ氏の事例は 2019 年のマイクロソフト本社のイベントにおいて、CEO サティア・ナデラのキーノートで紹介された。Ebiya (Satya Nadella 2019 Inspire + Ready Corenote Video)

 「今はプログラミングなどをすることなく、簡単にアプリケーションを構築できるサービスがたくさんリリースされている(※3)。AI がどのように情報を識別・判別して問題を解決するのか。それをおさえた上で AI が得意なことはなにか、という概念的な構造さえ理解していれば、専門家でなくても AI を活用したプロジェクトの立ち上げと推進は十分に可能」と講師は語った。


(※3)プログラミング不要でアプリケーションが作成できる例。
Microsoft Logic Apps では、Web ブラウザで開けるデザイナー上からタスクをドラッグ & ドラップするだけでアプリが作成できる

 受講者からは「 AI ならではの課題解決のアプローチがある、ということがわかってきた」、「人間が得意なこと、機械( AI )が得意なことの役割分担がクリアになってきた」「課題提起や目的を設定するのは人間、データをベースに提案(予測)をしてくれるのが AI 、最終的な判断するのは人間、というシンプルな役割分担であることがわかった」「 AI と聞くと身構えてしまっていたが、非常に有用なツールで利用しない手はないと思った」といった声がセッションの序盤から聞かれ、 AI プロジェクトを立ち上げる上で必要な「知恵」が受講者に十分伝わる場になっていることが伺えた。

AI プロジェクトを推進するための「勇気」

 続いて、講師は「AI活用を進める上ではビジネスサイドの人間が積極的に「勇気」を持ってAIプロジェクトを立ち上げるべきである」と語った。「決してIT部門にAIプロジェクトを丸投げしてはいけない。ビジネスサイドの人間がAIプロジェクトを推進しないとプロジェクトは失敗してしまう」と忠告する。

 「IT部門には業務効率やセキュリティなどを担保しながら、いつでも正しいデータをアウトプットするシステムを構築し運用することが求められている。一方AI プロジェクトでは、トライアル&エラーを繰り返し、AI を育て続けながら予測の精度を高め、最終的に成果が上がればよし、という進め方が特徴的。営業(多少売上の凸凹があっても最終的に目標達成ができれば問題ない)や、新規事業の立ち上げといった仕事に考え方が非常に近い。」

 続けて、「つまり、AIプロジェクトの進め方は、これまでIT部門が取り組んできた、ウォーターフォール型で確実に正しい結果を出すことを重視するITプロジェクトの進め方とは対極に位置している。このためAIプロジェクトを従来のIT部門に丸投げすることは根本的にお門違いであり、営業や新規事業担当などのビジネスサイドの人間こそがAIプロジェクトを推進するべきだ」と受講者に伝えた。

 それでも、実際にAIプロジェクトを立ち上げる際には社内のハードルは高い。では、どうすればよいのか。

 講師は「予算確保が難しく適切な人材調達も困難な場合は多い。さらに社内にはAI が予測に用いるためのデータがないなどの事情もあり、プロジェクト化のハードルが高いという声もよく聞く。そうした状況では、最初から周囲の人を巻き込まず、一人でプロジェクトをはじめてしまえばいい。社内にデータが足りないのであれば、社外のデータも積極的に使えばいい。一人でもプロジェクトをスタートさせれば、今後、社内のイノベーター、さらには社会のイノベーターとして活躍できる可能性が生まれる。今はその千載一遇のチャンスが訪れている時期だ」と、受講者自身がAIプロジェクトに取り組むべき理由を論じた。

 マイクロソフトの調査によるとAI活用を進めようとしている企業はまだ全体の3割程度(※4)とのこと。他方、日本は官公庁が公開しているデータをはじめ、正確で大量のデータが安価あるいは無料で手に入る公共データの宝庫であるという。加えて、Microsoft Azureをはじめとしたクラウドサービスが無料~月間数万円程度の金額で提供されており、非IT人材でも活用可能なAIを使ったサービス構築のためのインフラが整っている。「現在はまさに、データとAIを活用した多くの潜在的かつ豊富なビジネスチャンスを手にできるタイミングだ」と講師は指摘する。


 「AIプロジェクトを始めようとすると、通常のプロジェクトと同じく、まずは『周囲を巻き込んでいくこと』が大事だと思われがちだが、こうしたアプローチでは失敗してしまうのがAIプロジェクトの難しいところ。周りを巻き込まず、ひとりぼっちでプロジェクトをはじめるのが理想的」と講師は語る。

 その理由として、「AIプロジェクトはいかにイテレーション(市場の反応を見ながら、何度もトライアル&エラーを繰り返して精度を高めていく営み)を多くまわせるかが成功に直結する。正式プロジェクトにしてしまうと、失敗許容回数が著しく減少してしまい、イテレーションがまわしづらくなってしまう。プロジェクト初期の失敗を重ねるフェーズは水面下でじっと耐え、ある程度成功が見えてきてから正式プロジェクト化すべき」と自身の経験も踏まえて説明した。

 このような「ひとりぼっちではじめる」アプローチでAIプロジェクトに取り組んだ成功事例として、前述の伊勢神宮の近辺で食事や土産物を取り扱う「ゑびや大食堂」およびEBILABの取り組みを紹介。本誌でも何度か取り上げてきたゑびや(※5)は、来客データを数値化し可視化することで、直近では需要的中率を98%まで高めている。その結果として顧客の回転率を3倍以上に押し上げ、AI活用の取り組みを始めてから4年間で利益率は10倍以上、従業員の平均給与も20%アップしたという。


  • (※5) “老舗ベンチャー”ゑびや大食堂が「的中率9割」のAI事業予測をサービス化!
    ITビジネスに参入決断した「その理由
  • 「データは嘘をつかない」--ITの力で大変貌を遂げた伊勢の老舗食堂「ゑびや」の革命

 講師は「事業規模に関わらず、需要予測ができれば最適なリソース配置ができる。結果、生産性が大きく向上する。実は、このプロジェクトにひとりぼっちで取り組んだのは婿養子としてゑびやに入ってきたばかりの非IT人材の社長。こういった、経営を俯瞰(ふかん)できるビジネスサイドの人間がAIプロジェクトに本気で取り組み、現場視点や経営視点で改善案の策定と実行を繰り返したからこそ、このような成果を出すことができた」と解説した。

 本セッションの終了後、受講者から「従業員20名規模の地方の食堂でこんな成果を出せることを目の当たりにして、驚愕した。自社のリソースではAIプロジェクトなんて無理・・・とはもう言えない」「ITはそこまで得意じゃないし、機械学習やAIといったものは専門家が取り組むものでしょ、という感じで敬遠していたが、もうそんな言い訳はできない。自分もAIプロジェクトを立ち上げるんだ、という覚悟が決まった」といった感想も全体に共有され、会場は熱気に包まれる場となっていた。

提供:日本マイクロソフト株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2019年12月31日

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