教師であれ、保護者であれ、多くの大人は、授業中にiPadを触っている子どもがいたら “遊んでいるのではないか” と思ってしまう。また子供が部屋でiPadを使って勉強している時も、“ゲームをしているのではないか”と疑ってしまう。なぜなら、自分たちがまだ中高生だった時は、タブレットやスマートフォンがなかったため、学習にICTを活用するイメージが持てないからだ。
こうした大人の感覚が子どもの創造性や可能性にブレーキをかけてしまうのではないかと問題意識を持っているのが、聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市 / 以下、聖徳学園)でCISO / 情報システムセンター長を務める横濱友一氏だ。同氏は、iPadによる一人1台を実施する同校において長年、子どもたちの利用を見てきたが、大人が思っているようなイメージと実際の子どもの利用には隔たりがあるというのだ。
「もちろん、子どもたちは情報リテラシーやモラルが発達段階にあるので不適切な使い方がゼロではありません。しかし、全体的な傾向としては、大人が思っている以上に子どもたちは学習にきちんと活用し、クリエイティブな使い方をしていると感じます」と横濱氏。だからこそ、子どもたちのクリエイティビティが大人の不安によって阻害されないことを望んでいるというのだ。
横濱氏は「iPadを使っている姿だけを見て、“どうせゲームしているのでしょ”と決めつけるのではなく、子供たちがどれだけクリエイティブなものを作っているのか見てほしいなと思っています。学校としても、子どもたちのクリエイティビティをきちんと評価できる環境にしていきたいです」と語る。
横濱氏はそんな課題への対応策として、MDM(Mobile Device Management)ベンダーのインヴェンティットからリリースされたiPadセキュリティパック「mobiconnect CSC」を2019年4月から導入した。
同製品は、シスコシステムズ合同会社が提供する「Cisco Security Connector(以下、CSC)」と、インヴェンティットが提供するMDM「mobiconnect」が提携したソリューションだ。iOS端末の通信のセキュリティ強化と内部動作の可視化を同時に実現できるCSCと、日本の文教タブレット市場でNo1のシェアを誇るmobiconnectが提携することで、安心・安全な学習環境と充実したICT環境整備をめざす。CSCのソリューションパートナーとして認定されたMDMベンダーは、インヴェンティットが国内初となり、同社の強みを活かしたビジネス展開が期待される。
mobiconnect CSCでは、何ができるようになるのか。iOS端末における通信セキュリティの強化もさることながら、最も注目したいのは、iPadアプリの稼働状況を収集・把握できるようになることだ。たとえば、子どもが何時何分に何のアプリを使ったのか、子どもがどのサイトにいつアクセスしたのかなど、細かな情報がリアルタイムで可視化できるという。
横濱氏は「一見、このようなソリューションを使うと、子どもの監視を強化しているように思われがちですが、決してそうではありません。子どもがどのアプリをどのように使ったのか、そのデータを分析することでクリエイティビティの育成や評価につなげていくことができないかと考えています」と語る。
今まで、子どもたちがデジタルで作品を作っても、学校は提出物でしか評価できなかった。しかし、ある子どもはプレゼンのスライドを作るために、画像編集、音楽編集、計算機、メディアプレイヤー、授業支援ツールなど複数のアプリを使い表現豊かに仕上げていたという。横濱氏は「昨今は中高生でもクリエイティブな能力もつ子どもが増えています。そうした子どもたちの創作意欲や熱意に寄り添って評価できるようエビデンスが取れる環境を構築しておきたかったのです」と語る。