クラウドの企業導入が本格化する2010年--ブームに流されないための戦略を 佐々木俊尚氏に聞く

中堅・中小企業への導入はこれから

別井:では、中堅・中小企業へのクラウドコンピューティングの導入は、どのように進むのでしょうか。

ITジャーナリスト 佐々木俊尚氏

佐々木氏:クラウドコンピューティングの導入に関して、中堅・中小企業は立ち遅れるのではないかと心配しています。たとえば顧客管理や営業管理をウェブ経由で提供しているセールスフォース・ドットコムは、クラウドコンピューティングの代表的な存在です。米国では中堅・中小企業をメインターゲットにしているのに、日本での導入事例は郵貯やみずほ銀行など大企業中心で、中堅・中小企業には食い込めていません。

別井:それは、どのような理由があるのでしょうか。

佐々木氏:セールスフォース・ドットコムの日米における営業方針の違いもあるでしょうが、日本の中堅・中小企業では、専任のシステム管理者がおけないといった理由などから、ITリテラシーが高くないケースが多いというのが大きな理由ではないでしょうか。発注する側で仕様書が書けないようではSIベンダーに丸投げし、従来のビジネススタイルに合わせてカスタマイズしたシステムを新規開発することになってしまいます。コスト的にも時間的にもかなりのロスが出ます。

クラウドコンピューティングでは、サービスに自社のビジネススタイルを合わせることも必要です。クラウドコンピューティングを採用することで、劇的にコストが下がることが認知されれば、ITが分からないから我が社は導入しません、とは言ってられなくなりますがね。

クラウド選択の決め手は3つ

別井:数あるクラウドソリューションを選ぶ際に、企業の経営者やシステム担当者が気をつけるべきポイントはなんでしょうか。

佐々木氏:クラウド化を進める上では、「サービス規模」と「CPUパワー」、「コスト」という3つの項目の関係を計算しないといけません。クラウドコンピューティングを導入して成功するには、ある程度の規模がないと駄目ではないでしょうか。たとえば、ユーザー数が数百人程度ならクラウド化せず、自社サーバを継続利用したほうがよい。どれだけコストがかかるのか、戦略的に考える必要があります。クラウドコンピューティングが流行だからと、飛びつくと失敗します。

ITジャーナリスト 佐々木俊尚氏

別井:今後エンタープライズコンピューティングがどのように進化していくと見ていますか。セキュリティやコンプライアンスはどのようになっていくでしょう。

佐々木氏:海外のサーバにデータを預けることがセキュリティやコンプライアンス上、問題とされています。まず、その企業がセキュリティポリシーをどう考えているかが大事でしょう。顧客データを海外のサーバに置いてもいいのかどうかということです。ただ、海外のサーバにデータを置くことが危険だというのならば、国内のパブリッククラウドを使うとか、自社内でプライベートクラウド化することで解決できます。

現状、(1)海外のパブリッククラウドを使う、(2)国内のパブリッククラウドを使う、(3)自社内でプライベートクラウド化する、(4)そもそも自社サーバを使う、この4つの選択肢があります。コンピューティングの究極の姿はクラウドコンピューティングだと思います。クラウドコンピューティングを恐れず、今からきちんと対応するべきでしょう。

さらに、これからはクラウド化による情報の標準化が進み、クラウドサービス間の連携が進んでいく可能性が高いと思います。単体のサービスだけを見て選ぶのではなく、このような将来像も見据えてサービスを提供しているベンダーを選択することも重要ではないでしょうか。


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