クラウドの企業導入が本格化する2010年--ブームに流されないための戦略を 佐々木俊尚氏に聞く
大企業と中小企業でまったく異なる導入
別井:パブリッククラウドとプライベートクラウド、さらにこの2つに既存システムも組み合わせたハイブリッドクラウドなど、利用者はビジネス環境の変化に合わせて柔軟にシステムを選択できるともいわれます。企業の活用シーンをイメージすると、どのような業務や場面でそれぞれ効果的だと思いますか。
佐々木氏:おっしゃる通り、パブリッククラウドか、プライベートクラウドか、もしくはクラウドは導入しないのか、といった択一のものではないと思いますし、各サービスを導入した際の効果はユーザー企業が大企業なのか、中小企業なのかでまったく違うでしょう。大企業の場合は既に自社サーバを大量に運用していて、それをいまさらクラウド化することでいったい何のメリットが生まれるのかという議論は当然生まれるところです。メインフレームなども金融系ではいまだに動いており、そのような自社サーバ群をまず社内でどうやってクラウド化するかということがあるでしょう。突然パブリックにしても、たぶんコストは下がらない。大企業では全国に構築されている巨大なサーバ群をどのようにして統合・集約するか、いわゆるプライベートクラウド化するということがまずは課題になります。
クラウドのそもそもの定義としては、以前McKinsey&Companyの「Clearing the air on cloud computing」というプレゼンテーションを見たときに、3つ書いてありました。
それによると、1つ目は「ハードウェアの管理が高度に抽象化される」ということ。これは仮想コンピューティングのことですね。2つ目は「インフラのコストが変動的な事業運営費として扱われる」ということ。これはつまり固定費から変動費になるということで、外部化しないとできないでしょう。3つめは、「インフラの能力は拡大縮小自由自在」ということです。
プライベートクラウドを考えると、このうち2つめと3つめのことが解決しないのです。これは外部化することで初めて可能になるわけですから。だから、クラウドをパブリックとプライベートに分けて、プライベートだけがはやってしまうというのは問題があると思っていました。
ただ、最近の状況を見ると、企業内でも当初は大企業のプライベート化が中心に普及しているけれども、その次の段階は中小企業のパブリック化、並びに将来的には大企業のパブリック化に収れんしていくと見る向きが増えてきていますね。あくまでプライベート化は過渡期の存在ではないでしょうか。ただし、今まである膨大な数のサーバ群をどうやって有効活用するかということを考えると、やはりプライベート化というのは第一義的な解としては存在します。それをパブリック化するのは、あくまでもその先のことになるでしょう。
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