21世紀に入り、これまでの国際秩序を覆す動きが目立つようになり、大量破壊兵器の開発やテロなどの脅威は増える一方です。そのような動きを見せる国家や組織に対抗するため、安全保障を重視した輸出管理が国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)の下に進められています。この枠組みを踏まえ日本では「外国為替及び外国貿易法」(外為法)に基づき、貨物の輸出を規制する「輸出貿易管理令」(輸出令)や、技術の提供を規制する「外国為替令」(外為令)などの法令で経済産業省が審査・許可を行う形で輸出管理が行われています。 規制対象の品目や技術を輸出してしまった場合、10年以下の懲役、10億円以下の罰金(法人の場合)、3千万円以下の罰金(個人の場合)など、法律に基づいて罰せられる場合があります。特に近年は規制回避が巧妙化しており、2017年10月には外為法が一部改正され、罰則などが強化されています。
仮に過失でも違法輸出を行った場合、このような刑事罰だけでなく、企業の社会的イメージの悪化や社会的制裁、株主代表訴訟などの企業のコンプライアンスリスクが生じるため、管理を徹底する必要があります。
製造業や商社などが輸出を行う際には、取り扱う製品や技術が外為法の定める規制品目に該当するかどうかの「該非判定」、輸出先の取引先企業が懸念取引先リストに入っていないかどうかを判定する「顧客審査」、また取引の内容全体を審査する「取引審査」を行う必要があります。
該非判定では、「バッテリー」→「直流電源装置」、「センサー」→「測定装置」などのように品目の名称が法律用語で記述されているため、通常使っている品目の呼称を読み替えるための知識が必要となります。したがってある程度のノウハウが必要であり、結果として属人的な業務になりがちです。
また、「該非判定」や「顧客審査」など各審査は、常に最新の法令に基づいて実施する必要がありますが、各リストが頻繁に更新されるため、注意が必要です。
さらに「取引審査」は、取引リスクを判断するために厳密なチェックを行うことが望ましいのですが、そのための決裁文書が常に経営層まで回るようになっていると、審査時間が長期化し、出荷のリードタイム長期化など企業競争力の低下を招きかねません。
このように、輸出管理は非常に手間がかかり、限られた人しか携わることができないため、非効率的で、時としてヒューマンエラーによって懸念取引先に輸出が行われてしまうリスクもあります。