クラウドサービスはテレワークへの対応や、管理工数・コストの削減など、働き方改革や生産性の向上との親和性が高いため、企業での導入は増加の一途をたどっています。平成30年通信利用動向調査(総務省調査:2019年5月)によれば、約6割の企業が何らかのクラウドサービスを利用しているという回答をしています。
メリットの多いクラウドサービスですが、その普及によって既存のネットワークインフラ、特に複数拠点を閉域網やインターネットVPNで結んでいる企業では、ネットワークの速度低下が起き始めています。その原因は、クラウドサービス利用時に発生するインターネットアクセスのトラフィック増によるものです。
従来、LANや閉域網の中で完結していたトラフィックが、クラウドサービスの利用によりインターネットへ出ていくようになりました。そのため、ゲートウェイやプロキシを通過するトラフィックが増え、これら機器の負荷が大きくなっています。さらにMicrosoft® Office 365™やG Suiteなどのオフィスでよく使われるクラウドサービスでは、常にクラウド上のサーバーと通信を行うので、従来のアプリケーションと比較してデータ量やコネクション数が増加し、閉域網やインターネットVPNの帯域不足が起こる可能性があります。
では、このような課題にどのように対処していけばよいのでしょうか。真っ先に考えられるのは、回線やネットワーク機器といったネットワークインフラの増強です。
しかし、これには大きなコストがかかります。そこで提案したいのが、各拠点から直接インターネットに接続し、特定のアプリケーションのトラフィックを逃してしまうという考え方「インターネットブレイクアウト」です。
つまり、トラフィック量が多いクラウドサービスの通信を各拠点から直接インターネットへ出してしまうことで、トラフィックの集中を避け、拠点間の通信負荷を軽減することが狙いです。
ただし、これには課題があります。一つは、トラフィック量が多いクラウドサービスをきちんと選択して経路を制御することです。もう一つは、ネットワークの出入口が増えることによるセキュリティリスクの増加です。これらの対策のためにそれぞれ機器を導入するのであれば、やはりコスト面でも管理面でも負担が大きくならざるを得ません。