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世界最速クラスの学習処理能力を実現した富士通のAI「Zinrai」。 常に最先端であり続ける、そのテクノロジーに迫る

富士通は、30年以上にわたるAIに関する知見や技術を体系化した、「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を2015年11月に発表している。そして今回、AIに対する市場の関心が高まる中で、ユーザー企業がZinraiをより活用しやくするための「Zinraiプラットフォームサービス」をはじめとするZinrai関連サービスの提供を順次開始する。Zinraiプラットフォームサービスには、スーパーコンピュータからスマートフォンまで開発を手掛ける富士通の技術が結集されている。それを支えるテクノロジーについて、富士通 執行役員 アドバンストシステム開発本部長の野田 敬人氏に話を聞いた。

技術の粋を結集した富士通のAI

 Zinraiプラットフォームサービスは、AIを実際のビジネスに適用させたい、短期間でAIシステムを構築したいという企業ニーズに応えるものだ。同社のコンサルティングや導入、運用に関するサービスと組み合わせて活用することで、ユーザー企業は高品質で高速なAI活用システムを短期間で構築することが可能になる。

 各社からさまざまなAI製品やサービスが出そろう中、Zinraiプラットフォームサービスの大きなアドバンテージと言えるのが、スーパーコンピュータ/HPC(High Performance Computing)からパソコン/スマートフォンに至るまで、幅広いハードウェアラインアップを製品化してきた富士通の技術や知見だ。

 Zinraiプラットフォームサービスは、こうした富士通の技術の結集によって誕生したものであり、それを支えるテクノロジーには多くの特長が盛り込まれていると野田氏は言う。

 「Zinraiプラットフォームサービスのコンセプトは、『速く』『広く』『使いやすく』です。このコンセプトを実現する各種技術によって大規模処理からエッジまで、"誰でも使えるAI"の提供を目指しています」(野田氏)

図:Zinraiプラットフォームサービスを支えるテクノロジー 図:Zinraiプラットフォームサービスを支えるテクノロジー
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高性能技術を集約して、より「速く」

 「速く」―― すなわち高性能を実現する技術は、富士通が最も得意とする部分だ。Zinraiプラットフォームサービスには、世界最速クラスの処理能力を引き出すための技術が数多く盛り込まれている。

 例えばその一つに、Zinraiプラットフォームサービスに搭載されているGPU(Graphics Processing Unit)性能が挙げられる。もともとグラフィックス表示機能であるGPUだが、現在はその高速性能を利用して科学、分析・解析、エンジニアリングなどの高速処理が求められる分野にも活用されている。いわゆるGPUコンピューティングと呼ばれるものだ。

野田 敬人氏
富士通株式会社
執行役員
アドバンストシステム
開発本部長
野田 敬人氏

 そのGPUの中でもNVIDIAの最新アーキテクチャ「Pascal」による「Tesla P100」を採用。8基のTesla P100を1ノードに搭載し、さらにそれを富士通の並列化・チューニング技術によってさらなる高速化を実現した。

 「ここで使われている並列化技術は、スーパーコンピュータで培ってきた技術をベースにしています。さらにシミュレーションやグラフ処理といったスーパーコンピュータの技術も取り入れ、AIの要素技術である機械学習(Deep Learning)と両輪を回すことで、AIの処理速度を高速化させています」(野田氏)

 ちなみに機械学習フレームワークには、「Caffe、Tensor Flow、Chainer」といった一般的なオープンソースに加え、「Caffe」をベースに富士通が独自開発した、Deep Learningの学習速度を高速化するソフトウェア技術「Distributed Caffe」が採用されている。

 もう一つ、「速く」を実現するためのユニークな技術と言えるのが、液浸冷却技術だ。これは富士通クラウドでも利用されている液浸サーバにも応用されているもので、冷却効率が高く絶縁性のあるフッ素系不活性液体「フロリナート」の中に、ハードウェアを丸ごと沈めてしまうという技術である。

 「最新・最速のGPUラックに積んで冷やそうとしても、排気熱を閉じ込めるホットアイルの温度が約80℃にも達し、十分な冷却効果が見込めません。その点、液浸冷却技術を使えば約40℃で低温冷却でき、冷却に必要な消費電力を約40%削減することができます。このように冷却技術は、もはや性能を左右すると言えます」(野田氏)

 さらに富士通は、より一層の高速化を目指して専用プロセッサも開発中だ。これについては後述する。

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