「従来のやり方」が常に正しいとは限らない。また、それに気づいても人はその束縛から実は自ら進んでは解放されたがらない。解放された先に、何か未知のややこしい問題が隠されているかもしれないと恐れるからだ。しかし、従来のやり方にとらわれない柔軟な発想が、仕事の効率にこれほど影響するとは……。
特許翻訳者として活躍してきた著者は、平均的な翻訳者の5〜6倍もの処理量を誇るという。そのわけはほかの翻訳者のやり方を知らず、先入観なしに本当に必要な事を見極め、取り組んできたからであり、難しい事はしていないと断言する。重要なのは「できるわけがないと思わないこと」。
また、「翻訳スピードを上げるには」という大ざっぱな枠組みの中で考えるのではなく、「文字入力」「調べ物」などと作業を細分化して、具体策を考えることが大切だともいう。全体を一度にどうにかしようとするよりも、作業を細分化して1つひとつの作業を見直すことで、改善できることが明らかになる。1つの作業に対する改善の効果が少しだったとしても、その「少し」が10個あれば全体として大きな改善につながる。
これは、勉強に対する姿勢にも言えることで、翻訳者になりたいからと英語をまんべんなく勉強するのではなく、仕事で必要な範囲のみを集中的に勉強する。目的は成果物としてお客様に満足いただける翻訳文を出すことで、学者になることではない。「専門知識を持っていること自体ではなく、調べて理解する力が重要」である。
本書で言われていることは、実際にはほかのどの仕事にも当てはまることが多い。筆者は「柔軟な発想」ができない人の代表だと自覚しているが、本書を読み、実際にいつもの作業にかかる時間を短縮するべく今までとは違う方法をとったところ、約30分の時間短縮ができた。本書は長く抱えている問題を、違う視点で見直すきっかけをくれる。
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