メディア分野の識者たちは米国時間2月6日のSuper Bowlの広告を詳細に分析する予定だったが、7日の午前0時ごろにAOLがThe Huffington Postを3億1500万ドルで買収すると発表したことで、その予定はほぼ完全に吹っ飛んでしまった。
Ken Auletta氏はThe New Yorkerに、この買収は「第4クォーターのヘイルメリーパス(アメリカンフットボールにおいて、一か八かで投げるロングパス)のようなものだ」と書いている。Dan Lyons氏はThe Daily Beastで「スローモーションの列車事故のようなもので、大惨事になる」としている。
今回の買収案件にもっと楽観的な人々でさえ、AOLの最高経営責任者(CEO)Tim Armstrong氏がThe Huffington Postにこれほど大きく賭けていることに驚きと多少の疑念を示した。Armstrong氏はAOLを方向転換すると声高に宣言していたが、まだ結果を出せていない。The Huffington Postは大量のリンクアグリゲーションやスライドショー、無報酬ブロガーの記事の横に表示される広告、センセーショナルな見出しから利益を上げてはいるものの、その額は多くない。
AOLは今回の買収で、Arianna Huffington氏という華やかで人目を引く女性編集長を手に入れた。Huffington氏は、古い時代の新聞界の実力者たちを21世紀向けに新しくしたような存在だ。AOLは、同社のコンテンツサイトポートフォリオに巨大なニュースサイトを追加することにも成功した。それは、AOLのコンテンツポートフォリオの大部分を占める、人気はあるがニッチなブログブランドのすべてを大きく上回るものだ。また、Huffingtonの共同創設者であるKenneth Lerer氏がAOL Time Warnerの時代にAOLで幹部を務めており、元CEOのRobert Pittman氏などAOLの顧問だった人物と密接な関係を維持している(Lerer氏はPittman氏の投資会社Pilot Groupの一員)ことを考えると、今回の買収は極めて内輪の案件だ。そして、Armstrong氏とAOLが今回の買収を台無しにしてしまう可能性もある。
しかし、AOLはThe Huffington Postの買収によって、ウェブ上で最も大規模で最も活発なニュースブロガーとコメンテーターのコミュニティーの1つと、これまでのHuffingtonの成長を支えた技術も手にすることになる。
この買収によって、CEOのEric Hippeau氏をはじめThe Huffington Postの幹部社員の多くが同社を去る見通しであることを考えれば、注目を浴びているのは共同創設者のHuffington氏とLerer氏だ。The Huffington Postの3人目の共同創設者でテクノロジストのJonah Peretti氏の名前は、買収を報じる7日のニュースに全くといっていいほど登場しなかった。おそらく、Peretti氏がBuzzFeed創設のため、比較的早い時期にThe Huffington Postでのフルタイム勤務を辞めたことが理由だろう。BuzzFeedはアルゴリズムによるトレンド追跡を手がける新興企業で、当初はHuffingtonのニュースサイトとオフィスを共有していた。
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