楽天が10月に公開したレシピ投稿サイト「楽天レシピ」が急成長している。4カ月でレシピ数は4万件を突破、月間訪問者数は200万人を超えた。
ユーザーは自ら考案したレシピを投稿したり、すでに投稿されたレシピを参考に「つくったよレポート」を投稿したりできる。レシピの投稿者と閲覧者がレポートを通じてコミュニケーションを取れるようになっている。
これはレシピサイトの老舗「クックパッド」と同じ仕組みだが、楽天レシピの特徴は3つある。
1つ目は楽天スーパーポイントとの連動だ。レシピ投稿とつくったよレポートの投稿でポイントが付与されるため、ユーザーのモチベーションが非常に高い。オリジナルレシピは50ポイント、つくったよレポートはレシピ考案者とレポート投稿者の双方に10ポイントが付与される仕組みだ。
たとえば夕飯のメニューのうち、1品をオリジナルレシピで作って投稿し、もう1品を既存レシピを参考につくったよレポートとして投稿すると、合計で60円相当の楽天ポイントがもらえることになる。自分のレシピが人気を集め、数百人からつくったよレポートが届くこともある。すでに10万円相当の楽天ポイントを稼ぎ出したユーザーもいるという。
「50ポイントは安いもの」とインフォシーク事業長の濱野斗百礼氏は語る。「クックパッドには現在約90万のレシピが投稿されているが、それらすべてに50ポイントを払って楽天に再投稿してもらってもわずか4500万円。ポイントはもっと高くしてもいいと思っている」とのことだ。現在は特定の食材を使ったレシピを投稿すると60ポイントがもらえるといったキャンペーンも実施している。
ほかのレシピサイトや自分のブログ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などにレシピや調理記録などを書き貯めている人は、時間のあるときに一気に楽天レシピに再投稿してみると、思わぬ副収入が得られるかもしれない。楽天レシピでは、自社や他社のサービスに投稿されたレシピとそれに付随する画像などを、第三者が許可無く利用することを禁止している。投稿されたレシピは公開前に審査される仕組みだ。
2つ目はレシピと販売の連動だ。楽天市場は国内最大規模のECモールである。2009年の国内流通総額は1兆1000億円を突破している。その経済圏の中に設置された楽天レシピは、もっとも“売り場”に近いレシピサイトであると言える。
「クックパッドになくて、楽天にあるのは出口。我々なら楽天レシピから楽天市場での買い物に直接つなげられる。レシピには材料、道具などが関係してくる。レシピの中で『この鍋を使えばおいしくできる』と書いてあれば3万円の鍋だって売れるはず」(濱野氏)
2009年の日本の総広告費は約6兆円だったが、そのトップは「食品」で構成比は10.2%。だがそのほとんどは4マス媒体に流れており、インターネット上には食品系の広告は少ないのが現状だ。楽天はレシピサイトを開設することで、この分野の広告主を獲得していく考えだ。
また楽天市場に出店する店舗のうち4分の1は食品関連である。そういった店舗がレシピを投稿して自分のサイトに誘導したり、楽天トラベルに出稿しているレジャー施設がレシピを投稿したりと、楽天グループ内のシナジーを活用した広告展開も期待できるという。
「楽天は消費者の出口に最も近い場所であり、広告価値は高い。ユーザーレビューのほかに、メーカーが消費者にアプローチできる場を作ることも検討したい」(濱野氏)。楽天レシピを開設する前にユーザーに調査したところ、レシピと同時に表示される広告に対しては、「有益な情報源になり得る」という声が多かったそうだ。
3つ目は楽天会員を中心としたプロモーションが可能な点だ。楽天会員は現在約7000万人。なかでも主婦のユーザーが多い。「楽天で買い物している人の半分以上が女性。プロモーションをしなくても、楽天レシピに来てくれる。外部への告知は一切しておらず、楽天内の施策だけでここまでやってきた」(濱野氏)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」