親しみを持ってほしい、実験したい--NHKがYouTubeにノーカット番組を配信する理由

鳴海淳義(編集部)2010年12月06日 20時14分

 12月6日、NHKで放送された200本以上の番組が動画共有サイト「YouTube」で視聴できるようになった。グーグルがNHKエンタープライズとコンテンツライセンス契約を締結し、YouTube上に特設サイト「NHK番組コレクション」を設置した。

 当初から公開されているのは、ノーカットの動画が約200本、すでに他のサイトで有料で配信されている番組を3分程度に編集した動画が約30本。配信の範囲は国内限定で、デバイスもPCのみに制限されているが、「プロジェクトX」や「ためしてガッテン」などの人気番組もノーカットで配信される予定だ。

 NHKエンタープライズ側でグーグルとの契約締結を進めたのは、上席執行役員 ライツ・アーカイブスセンター長の関本好則氏。NHKオンデマンドの立ち上げを経て、NHKエンタープライズに異動。現職では他社への番組提供業務と、ネット配信における権利処理チームを統括する。関本氏は12月6日に開催された記者会見でYouTubeに番組を配信する狙いについて次のように語った。

NHKエンタープライズ上席執行役員 ライツ・アーカイブスセンター長の関本好則氏NHKエンタープライズ上席執行役員 ライツ・アーカイブスセンター長の関本好則氏

関本氏:YouTubeでは正規の、つまり権利処理をすべて施した動画を公開する。YouTubeのユーザーにもなるべく権利処理されたものを多く見てほしい。グーグルと契約するにあたっては権利者の許諾を取る必要があった。

 まずNHKとの間で話し合いをして一致した見解は、YouTubeで動画を公開することでNHKの接触者数を増やしたいということ。NHKを見ていない人がYouTubeを見ている。そういうところにNHKの番組を出して親しみを持ってもらいたい。また我々が新しいメディアに全然関係していないのもどうかと思う。どういう結果になるのか実験をしてみたい。

 3分に編集した動画についてだが、NHKオンデマンドなどのサイトで有料配信している動画と同じ物をYouTubeで無料公開するのは商売上あり得ない。有料で出しているものは3分に編集し、その後でNHKオンデマンドへの誘導窓口を作って、そちらにも入ってきてもらいたい。

 あとは違法動画対策がある。権利者の許諾を取っていない番組がYouTube上にはたくさんある。動画をYouTubeに出すことによって、YouTube上の排除システム(コンテンツIDシステム)が違法のコンテンツをチェックし、削除できるようになる。そのような違法動画対策についても実証実験をし、どんな効果があるか見てみたい。公開前から実験はしてきたが、けっこうな数の動画が削除されているようだ。

 番組というものはNHKの了解を取っただけではネットに出せない。ドラマの場合は役者や作家がおり、たった1人でもノーと言うとネットに出せない。YouTubeに出すにあたっては、NHK側と合意した点を中心に権利者団体に説明してまわった。了解してもらったコンテンツのみを出し、1人でもノーと言えば出していない。著作権法上そう決まっているからだ。今後も著作権法に従って許可をいただいた番組のみを出していく。

 これからどんな番組が何本アップされるのかと考えるだろうが、1人でもノーと言えば無理。 さらに、犯罪に関わった人のコンテンツは出せなくなる。 そういう意味で不確定要素はあるが、なるべく多くの人に正規のコンテンツを見る習慣をつけてほしいというのが私の思いだ。

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