製造業や建築設計、土木、CG業界向けに、2Dおよび3Dの設計ソフトウェアを提供する米Autodeskが、クラウド関連事業に本腰を入れている。クラウド上でコラボレーションできるサービスや、クラウドの処理能力を活用するサービスなど、さまざまなプロジェクトを展開しているのだ。同社のクラウドビジネスについて、来日した米Autodesk プラットフォームソリューション&エマージングビジネス担当シニアバイスプレジデントのAmar Hanspal氏に聞いた。
Hanspal氏によると、Autodeskのクラウドビジネスは主に3つの分野に分けられるという。まず1点目は、クラウドでソフトウェア体験をより充実したものにするという分野だ。1月に公開したサービス「Project Butterfly」がこれにあたる。
「Project Butterflyを使えば、クラウド上で遠隔地にいるユーザー同士がコラボレーションできる。これまでは、制作者がデザインしたものに対するコメントは、デザインをPDFや紙に印刷した上で行われていたが、クラウド上で制作物を共有できればリアルタイムに遠隔地からコメントを受けることもでき、その内容をすぐに反映したり共同編集したりできる」(Hanspal氏)
現在このプロジェクトは無料で一般に公開されており、すでに5〜6万人のユーザーが利用しているという。Butterflyは単独で利用することも可能だが、AutoCADの拡張機能としても利用できる。Hanspal氏は、「詳細なデザインはデスクトップソフトのAutoCADを使い、Butterflyでコラボレーションするといった使い方もできる」と説明する。同プロジェクトの一部は、iPhoneおよびiPad用のアプリ「AutoCAD WS」として8月31日に正式に発表されている。
2点目の取り組みは、クラウド上の演算処理能力を活用するサービスの提供だ。デスクトップのリソースでは処理しきれない、もしくは時間がかかってしまうような高度な処理を、クラウド上のリソースを使って処理するというコンセプトだ。
そのサービスのひとつは、クラウドを活用したレンダリングサービス「Project Neon」だ。3Dデザインをよりリアルに表現するレンダリングは非常に高い処理能力が必要とされるが、例えばデスクトップ上で4時間かかるようなレンダリングが「Neonを利用すれば4秒でできる」(Hanspal氏)という。
同様にクラウドの処理能力を活用したサービスとしては、イメージプロセシングサービスの「Photo Scene Editor for Project Photofly」がある。これは、複数の2D写真を組み合わせ、3Dイメージを作成するというもの。Hanspal氏は、「例えばビルを修復する際にビル全体をスキャンし、3Dデザインを作成するには膨大なコストがかかるが、Photoflyを使えば通常のデジタルカメラで撮影した2Dのデータをクラウド上のソフトウェアが分析し、3Dイメージを作り上げるため、ビル全体をスキャンする必要はない」と説明する。
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