薄型テレビ市場は、この3月にこれまでにない大きな盛り上がりを見せた。BCNの実売データによると、3月の薄型テレビは前年と比較して販売台数が2.5倍、販売金額が2.08倍と異例の動きとなっている。
これは4月1日に導入された新「エコポイント」制度を目前に控えた3月、これまでエコポイントの対象だった商品が対象外になる前に購入しようとする、いわゆる“駆け込み特需”によるものだとBCNアナリストの道越一郎氏は説明する。駆け込み特需のピークは3月20〜22日の3連休となり、3月末には旧制度の対象商品が品薄だったという。
道越氏は、「年間を通じて製品の販売ピークを迎えるのは通常、12月の年末商戦と3月の新生活需要」と説明。2009年12月の年末商戦と比べて、さらに販売台数を伸ばしている3月の薄型テレビ市場について、「近年まれにみる推移」(道越氏)と述べている。
薄型テレビ全体の平均単価は前年同月比1万8000円減の8万300円となっており、エコポイントの登録・商品交換申請の受け付けを開始した2009年7月以降、連続的に下落している。なかでも40型台の平均単価は前年同月比23.3%減の下落率となっている。
また、画面サイズ別の台数伸び率を見ると、20型台が前年同月比2.6倍、30型台が同2.4倍、40型台が同3.2倍、50型以上が同2.2倍となっており、40型台が突出した伸びとなっている。道越氏は、「市場では32型が中心だが、価格下落により40型台を購入するユーザーが増えている」と分析している。
価格の下落と40型台の伸び率が、「メーカー別シェアに変動を生んでいる」と道越氏は指摘する。メーカー別台数シェアは、シャープが33.4%(前月比6.4%減)で依然としてトップだが、次ぐ東芝が23.3%(前月比4.1%増)と初めて20%以上のシェアを獲得している。さらにBCNがデータを集計し始めてからシャープは最低の水準、東芝は最高の水準になっているという。
道越氏は東芝のシェア拡大について、「東芝はほかのメーカーに比べてかけ離れて安い」と説明。メーカー別平均単価をみると、シャープが8万6700円に対して東芝は6万9500円となっており、「40型台を中心とした手軽な商品で攻めている」と分析している。
BCNが薄型テレビの集計を開始した2004年10月以降、販売台数、販売金額ともに過去最大を記録した3月だったが、4月に入ると一気に沈静化している。土曜日と日曜日を合算した統計によると、3月20日と21日で前年同月比226.4%増、27日と28日で同201.2%増だが、新基準に切り替わった最初の週末である4月3日と4日では同12.3%増と鈍化している。「前年割れまではいかないが、エコポイントが開始した頃に戻った」(道越氏)としている。
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