ノークリサーチQuarterly Report 2010年秋版(Vol 013)

株式会社ノークリサーチでは、中堅・中小市場における第13回目のIT投資実態調査を行った。

回復基調から足踏み状態へと後戻りするも、個別ニーズを捉えれば対処は可能
▼ 年商5億円未満の企業層では必須のIT投資需要が一巡し、再び投資抑制状態へ
▼ 年商5~100億円の企業層では業績改善志向と現状維持志向との見極めが重要
▼ 年商100~300億円の企業層では延期中のIT投資案件での粘り強い継続が大切
▼ 組立製造業に対してはサービス形態訴求などによる初期投資負担軽減策が有効
▼ 小売業は業績/IT投資共に厳しい状況だが、業績改善のための提案を求めている

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2010年11月29日

ノークリサーチQuarterly Report 2010年秋版(Vol 013)

2010年秋の中堅・中小企業におけるIT投資指標

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


株式会社ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター1705:代表伊嶋謙ニ03-5244-6691 URL:http//www.norkresearch.co.jp)では、中堅・中小市場における第13回目のIT投資実態調査を行った。
※グラフにつきましては下記URLをご参照ください
リンク

調査対象抽出条件: 年商500億円未満の国内民間企業1000社の経営層および管理職
調査実施時期: 2010年11月


回復基調から足踏み状態へと後戻りするも、個別ニーズを捉えれば対処は可能

▼ 年商5億円未満の企業層では必須のIT投資需要が一巡し、再び投資抑制状態へ
▼ 年商5~100億円の企業層では業績改善志向と現状維持志向との見極めが重要
▼ 年商100~300億円の企業層では延期中のIT投資案件での粘り強い継続が大切
▼ 組立製造業に対してはサービス形態訴求などによる初期投資負担軽減策が有効
▼ 小売業は業績/IT投資共に厳しい状況だが、業績改善のための提案を求めている


<IT投資DIと経常利益DIの変化>過去一年間の回復基調から一転して、再び足踏み状態へ

以下のグラフはIT投資DIおよび経常利益DIの変化をプロットしたものである。2008年秋の金融危機以降、IT投資DIと経常利益DIいずれもマイナスでの遷移が続いている。依然としてDI値自体はマイナスではあるものの、2009年11月からはプラスへ向かっての回復基調が見られていた。ところが2010年11月には再び下降に転じ、先の見えない政局、円高の長期化、不安定さを増しつつあるアジア情勢といった環境要因の影響もあって、回復が停滞ないしはやや後退する状況となっている。中堅・中小企業のIT投資も全般的には抑制傾向となるのは避けられないが、不況下においても不可欠なIT投資は存在しており、IT投資抑制の事由も企業規模や業種/業態によって大きく異なっている。以下のページでは年商および業種に応じたDI値変化をプロットし、そこから得られる個別傾向について触れている。

[IT投資DIの定義]
今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出した「IT投資意欲指数」
[経常利益DIの定義]
前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差によって算出した「経常利益増減指数」


<年商別のIT投資傾向>年商5億円と100億円を境に投資傾向は大きく3つに分かれる

以下のグラフは経常利益DIおよびIT投資DIの変化を年商別にプロットしたものである。経常利益DIはいずれの年商帯においても前回調査時点から下降している。「自社の販売や受注における数量ないしは単価が下降もしくは横ばい状態」を理由に挙げる企業が多く、「日本国内の需要はまだ回復していない」という観測が強い。そうした業績状況を受けてIT投資DIも全ての年商帯において値を下げているが、その事由については年商規模によって相違が見られる。年商5億円未満のIT投資DIは他と比べて大きく減少しているが、その主たる事由としては「現状を維持する以外、特にITに対し投資をする必要はない」が6割を超えている。Windows 7への移行に伴うクライアントPC刷新といった不可避のIT投資に対する需要が一巡しつつあることもあり、今後は現状維持のための最小限のIT投資に留める意向が再び強まるものと予想される。年商5~50億円および年商50~100億円の企業層ではIT投資減額の事由として、「IT投資の必要性は感じているが、それだけの資金余力がない」が5割前後で最も多くを占めている。ただし、IT投資を増額すると回答した企業においてもその事由は「業績改善投資」と「現状維持投資」の比率がほぼ半数ずつとなっており、資金面のハードルを下げれば新規のソリューション提案を受け入れるとは限らない点に注意が必要である。ITを提供する側としては企業の動向を把握して、「業績改善に取り組む意向の有無」を早期に見極めることが重要なポイントとなってくる。年商100~300億円および年商300~500億円の企業層ではIT投資減額の事由として「予定/計画しているIT投資はあるが、不況のため延期中である」が2~3割存在している。ITを提供する側としては停滞している商談であっても、継続的な情報発信や顧客との接点維持に努めることが重要と考えられる。


<業種別のIT投資傾向>業種によって投資負担軽減や業績改善提案など有効な施策は異なる

以下のグラフはIT投資DIの変化を業種別にプロットしたものである。いずれの業種もIT投資DIの値はマイナスとなっているが、前回調査時点からの増減という観点では卸売業、流通業、組立製造業が増加、それ以外の業種は減少となっている。卸売業は前回調査時点から経常利益DIが4.5ポイント回復し、1.9と全業種の中で唯一のプラス値となっている。その事由としては「販売/受注の数量増加」が挙げられており、その要因として「海外向け需要の回復」を挙げる比率が比較的高い。こうした業績状況を受けてのIT投資増加と考えられるが、その中身は「現状維持のための更新」が6割を占めており、必ずしも新規ソリューション提案に結び付くとは限らない点に注意が必要である。流通業は経常利益DIが21.7ポイントと大幅に下落しており、景気回復の停滞/後退の影響を大きく受けている。そのため不可避な更新需要という観点でIT投資DIがプラスに転じてはいるものの、実質的にはIT投資抑制状態が続いていると見るべきである。組立製造業は経常利益DIが11.2ポイントと大きく下落したものの、IT投資DIは3.3ポイントの増加と比較的堅調を維持している。製造拠点の海外移転などによる中長期的なIT投資が求められており、IT投資削減事由にも「予定/計画しているIT投資はあるが、不況のために延期中である」が他業種と比べて多い。サービス形態の訴求などによる初期投資負担軽減に配慮したソリューション提供が有効と考えられる。
一方、IT投資DIが減少した上記の三業種以外では、IT投資減額の理由として「現状を維持する以外、特にITに対して投資をする必要はない」を挙げる割合が高い。ただし、小売業とIT関連サービス業については例外である。小売業は経常利益DIが25.2ポイントと大きく下落しており、IT投資DIの下落幅も全業種で最も大きい。エコポイント半減を目前に控えた特需など局所的かつ一時的なプラス要因は幾つかあるものの、中堅・中小の小売業全体としては厳しい状況といえる。だが、IT投資減額事由としては「現状を維持する以外、特にITに対して投資をする必要はない」を挙げる比率が他業種よりも低く、一方で「IT投資の必要性は感じているが、何をすべきか判断できない」の比率が高い。業績改善に向けた具体的な提案がされば、それを受け入れる可能性は十分あると考えられる。IT関連サービス業については、クラウドなどがもたらす変化に追随するための投資が必要であるという意識が高く、それらに向けた予定/計画を立てているものの資金余力不足や不況を理由に実施できていない状況が目立つ。このようにDI値自体は似たような遷移をしていても、その事由は業種によって異なることが多い。各業種の事情を踏まえ、提案の内容をきめ細かく変えていくことが今後ますます求められてくると予想される。


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