“CULV”搭載ノートPCと呼ばれていたジャンルのノートPC市場が一気に花開いた。価格面でも性能面でもいわゆるネットブックの少し上を狙った製品で、ネットブックでは制限を感じていた面が払拭された性能を持つノートPCとなる。Windows 7の登場と時を同じくして製品が拡大し、新しいOSとともに少し上の性能のノートPCが普及しそうだ。
CULVはConsumer Ultra Low Voltageの略で、インテルのCPUラインアップの中のULV(超低電圧)というジャンルの頭に“コンシューマー”とつけたものだ。
今までのULV搭載のノートPCといえば、パナソニックのレッツノートT/W/Rシリーズ、ソニーのVAIO T、レノボのThinkPad X200sなどバッテリ駆動時間を重視した高価格モバイル向け製品が中心だった。ULVの具体的なCPU型番では、Core 2 Duo SU9300、Celeron 723などで、いずれも小型で高価格のモバイルノートPCに搭載されてきた。
今回、頭にCが付くことで何が変わったかいえば、実は違いはほとんどなく一部のCPUラインアップが変わった程度だ。ULVではCore 2 Duoが中心だが、CULVになったことで低価格な超低電圧CPUとしてCeleron 724や、デュアルコアのCeleron CU2300搭載機種が目立つようになった。これらのCPUは、ULVのCore 2 Duoをベースに派生したもので、動作クロックやキャッシュ容量を調整することで低価格化と差別化を図っている。
また、CPUの脇を固めるチップセットや内蔵ビデオチップは、ULVはじめ上位機種と同等のものを搭載している。現在登場しているCULV機種は一部を除いてインテル GS45 Expressチップセットを搭載しビデオチップはGMA4500MHDで、ビデオ再生などが強化されている。低価格ネットブックに多く搭載されるGMS945チップセットからは2世代も進み、Windows 7をより活用できるグラフィック性能を持っている。
そのほか、CULVノートではないが、ソニーの超軽量ノートPC「VAIO X」がCULVに近い約12万円(店頭モデル)で登場している。VAIO XはCULVノートに近い11.1型で1366×768ドットの液晶を搭載、サイズはCULVノートに近いものとなっているが、最大の違いは店頭モデルで765gという軽さを誇る。
VAIO XのCPUはAtom Zシリーズのため処理性能ではCULVノートに劣るものの、圧倒的に軽量なボディは性能とトレードする価値がある。軽量というネットブックにプラスαを求めるなら、これも十分にCULVノートのライバルとも言えるだろう。
従来のネットブックの制限は、液晶解像度の問題があった。初期のものは上下方向の解像度が480ドット、その後は600または576ドットに拡大されたとはいえ、ソフトウェアによっては700ドットほどなければ画面の全部が表示されないといった不都合があった。
現在登場しているCULVノートは、すべて1366×768ドットの液晶を搭載している。現在のノートPCの一般的な解像度の1280×800ドットに近く、メールやウェブなどを利用する分には不便はなくなっている。また、サイズも11.6型と13.3型の2サイズが占める。
なお、最近登場したネットブックでは、CULV機種と同じ1366×768ドットや1280×720ドットの液晶を搭載した機種も登場しているため、画面だけの問題ならネットブックも改善されている。
14型や15.6型液晶の安価でスタンダードなノートPCとの違いはというと、CPUが低電圧で動作するので省電力かつバッテリ駆動時間が長くなっている点。CULVノートでは光学ドライブを搭載しない機種がほとんどであることも異なる点だ。
とはいえ、DVDの再生やビデオ編集など、光学ドライブを必要とする作業をしなければ、不便を感じることはほとんどない。むしろ、小型軽量や、必要に応じて持ち運びしやすい点、低消費電力などメリットも多い。
今回、CULVノートの登場でノートPCの人気傾向が大きく変わる可能性がある。今までは小型軽量と安さでネットブック、そこそこの性能と使いやすさでスタンダードノートPC、使いやすく小型軽量の高額モバイルノートPCを選んでいたが、CULVノートならいずれのメリットも備えているからだ。
PCの購入相談では「ネットがまともに使えて、小さくて軽く、そして安い」などという難しい要求を受けることが多い。今までなら、そんな機種は「ない」の一言で片付いていたが、これからは光学ドライブがないことを除けば、CULVノートがその要求に応えられる。
むしろ、これまでなかったのが不思議なくらい、一般的な人たちの需要にマッチしたジャンルのPCといえる。
欠点のあまりないCULVノートだが、登場したばかりで価格面のバラつきが激しい。国内ブランドの製品なら、サポートやソフトウェアなどが満載されていながらも10万円程度するものもあり、海外ブランドの製品で付属ソフトなどがないシンプルな製品では4万円台から買えるものもある。
この価格差をどう見るかは人それぞれだが、メーカーの手助けを必要としないなら低価格な製品を、手助けが必要なら手厚いサポートなどがそろった国内メーカー品を選択するのがいいだろう。
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