ライブドアがテクノロジービジネスを扱うブログメディア「Tech Wave」を開設した。編集長には元時事通信 編集委員の湯川鶴章氏を迎え、ライブドアのブランド名を付けずに独立したメディアとして運営していく。
これまでポータルサイトのコンテンツは冠ブランドをつけることが多かった。ライブドアにも「livedoor ニュース」や「livedoor スポーツ」などのコンテンツがある。だがそれではメディアとしてのブランドは確立できないとライブドア執行役員 メディア事業部長の田端信太郎氏は語る。
「たとえばNumberが文藝春秋スポーツという名前だったらだいぶブランド感が下がりますよね。CanCamという雑誌の発行元が小学館だろうが講談社だろうがどうでもいいじゃないですか。同じようにTech Waveも『ライブドアITニュース』ではないんです」(田端氏)
Tech Waveはライブドアというポータル色よりも、編集長の湯川氏のキャラクターを前面に押し出す。ライブドア側は内容にはノータッチだ。
「1日の記事ノルマが何本とか、締切までに記事書いてくださいとか、旧来的な編集の進捗管理をするつもりはないです。まして我々が湯川さんの原稿に赤入れするなんてあり得ません。基本的には編集長、あるいはその周りに集まってくるゲスト投稿者が自発的にどんどん書いていく。特定分野に熱い想いを持っている人が自発的に記事を書くと、サラリーマン組織より明らかに良いものができるだろうという仮説を持っています」(田端氏)
ライブドアの役割はインフラの提供とサイトの収益化支援だ。Tech Waveオープンと同時に投資ブログメディア「Market Hack」を公開した。今後も専門的なブログメディアを複数立ち上げていく。たとえば自動車やデジカメ、歴史、鉄道など、熱心なマニアが存在する分野が面白いという。
それぞれの分野の専門家を編集長に招き、一般的なブログとは違った形で運営すれば、十分に収益化が見込めるという。ライブドアではすでに「ブロゴス」や「アゴラ」など、特定分野に特化したブログポータルを運営している。記事の文体、分量を決めて専門メディアに近い形で運営すると、「2ちゃんねるまとめ系のブログや普通のブログよりもAdSenseのクリック率とクリック単価が高い」という。
「最近感心したのはGoogleのAdsenseの在庫の量がある一定のスケールの壁を打ち破ったのか、かなりニッチな分野のことをブログに書いても、きちんとマッチングした広告が表示されていることです。ニッチな記事にニッチな広告を出せば、広告のクリック率とコンバージョン率は高くなります」(田端氏)
雑誌もウェブも、メディアの経営状況は厳しいが、田端氏は「良質なテキストは完璧にお金にできる」「トラフィックが増えていけばメディアビジネスとして成り立つ」と言い切る。ライブドアのインフラを活用すれば、サーバ費用などはライブドア全体のスケールメリットのなかで吸収でき、コストを大幅に軽減できるからだ。
「ライブドアのデータセンターやブログを利用することで、1からサイトを作るよりはるかにコストが安くなります。これをCNETさんに言うのもあれですけど、都心にオフィスを構えて、フルタイムの社員を雇って、しかも必ずしもその本人がやりたくもないことを人事発令してやらせるというスタイルのメディア会社に対して、Tech Waveのようなブログメディアは五分の勝負をできると思っています」(田端氏)
黒字化の目安となるのは月間500万PV程度だという。「数百万PVの真ん中ぐらいまでいければ、まず間違いなく黒字化はできると思います。それを最速半年くらいまでに実現できればと考えています。時期はまだわかりませんが、自信は持っています」(田端氏)
完全に独立したサイトを開設すると、当初はなかなかアクセスが伸びず、広告も売れないのではないかという不安があるが、それもライブドアのポータルサイトからトラフィックを流せば乗り越えられるという。「マネタイズと集客の2面で自己完結し、自前でどこのサイトの力も借りずに成長できるはずです」(田端氏)
一方で、Tech Wave編集長の湯川氏は「まったく自信がない。コンテンツで食っていくのはまず無理」と打ち明けた。「メディアというのは人を集めるためのツールであって、その周辺にビジネスモデルを作っていかざるを得ないというのが今の段階。もちろん将来的にはメディアだけでも食っていける時代が来るでしょうが、田端さんはそれがもう来ていると言っている。さすがだなと思います」(湯川氏)
だが、新しいメディアの作り方には明確なビジョンを持っている。Tech Waveでは湯川氏がこれまで時事通信ではできなかった情報発信の方法を取り入れるという。インターネットの双方向性をうまく利用すれば、効率良くコンテンツを生み出せるとの考えだ。
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