Appleは米国時間8月28日、「Mac OS X Snow Leopard」の出荷を開始したが、このMac OS Xアップデートの真の重要性は、かなり後になってから明らかになりそうだ。
その理由は、Appleが「Mac OS X 10.6」によって、コンピュータ業界全体が直面している、最新のプロセッサから有効な動作をしぼり出すという問題を、他に先んじて解決しようという長期的な試みを始めたからだ。Appleは、Snow Leopardにすぐに分かる新機能を詰め込むことはせず、プロセッサが1つのジョブを速く実行するより多くのジョブを同時に実行するという新しい現実に適応しようとしている。
Mac OS XのマーケティングディレクターであるWiley Hodges氏は、「われわれは将来に向けた基盤を築こうとしている」と述べている。
Applesは、6月に開催のWorldwide Developer Conference(WWDC)で、「Grand Central Dispatch」というプロジェクトの一部を明らかにしたが、詳細の大部分は、機密を保持することを誓ったプログラマーにのみ提供された。同社は現在、このプロジェクトや、グラフィックチップおよびIntelの64ビットプロセッサを利用する、より奥深いプロジェクトについて、公に話し始めている。
Appleはこの動きによって、コンピューティングにおける変化にさらに適合しようとしている。IntelやAdvanced Micro Devices(AMD)などのチップメーカーは、長年にわたりプロセッサのクロック速度を着実に高め、プログラマーは世代が新しくなるごとにパフォーマンスが向上することに慣れてきた。しかしここ数年、いくつかの問題によってギガヘルツ競争は行き詰まった。
まず、メモリの動作速度が比較的遅く、チップにデータを供給し続けることができないため、チップが暇をもてあますことが多くなった。さらに悪いことに、チップが非常に多くの電力を必要とするようになり、それによって対応が難しい大量の廃熱が発生した。
そのため、マルチコアが主流となる時代が始まった。プロセッサには、コアと呼ばれるコンピューティングエンジンが複数搭載され、それらが並行して動作する。これは、独立した要素に簡単に分解できるタスクには非常に有効だが、プログラマーは、タスクが連続したステップとして実行されるような、直線的な思考に慣れていた。
ここでGrand Central Dispatch(GCD)が登場する。Snow Leopardのこのコンポーネントは、並列プログラミングにおける困難な問題の多くを最小限にするように設計されている。Appleによると、Grand Central Dispatchを使用するように既存のソフトウェアを修正するのは簡単で、複雑な管理作業はOSが処理するのでプログラマーは処理をする必要がないという。
IlluminataのアナリストであるGordon Haff氏は、コンピュータ業界は全体的に、並列プログラミングへの本格的な取り組みを始めたばかりだと考えている。成熟した並列プログラミングツールの構築を10章の本だとすると、今のところ第2章にすぎないと同氏は述べている。しかし、ほかの選択肢はないので、その本は書き続けられるだろう。
「これは起きなければならないことだ。情報技術の歴史を見れば、起こるべきことは実際に起こっている」(Haff氏)
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