欧州で提供する「Windows 7」にブラウザを搭載しないというMicrosoftの動きは、競合企業にとっては有利に働くかもしれないが、欧州のコンシューマー、特に既存のマシンからアップグレードしようとする人には、不便をもたらす可能性がある。
米CNET Newsが米国時間6月11日に最初に報じたように、MicrosoftはPCメーカーと小売店の両方に対して、「Internet Explorer」(IE)を削除した状態でWindows 7を出荷することを計画している。
これから、ほとんどの人は新しいPCでWindows 7を入手するだろう。その場合おそらく、コンピュータメーカーはIEを追加し直すか、1つまたは複数の競合ブラウザを搭載するか、またはその両方を選択すると思われる。
実際、そうすることをMicrosoft自身が推奨している。
米CNET Newsが入手した、MicrosoftからPCメーカーへのメモには、次のように書かれていた。「Microsoftでは、OEMメーカーが販売前にIE8または自身が選択する少なくとも1つのほかのブラウザをプレインストールすることを推奨する。そうすれば、欧州地域内のエンドユーザーは、追加の作業や不便を強いられることなくインターネットにアクセスできるようになる」
本当の困難に直面するのは、既存のPCをWindows 7にアップグレードしようとするユーザーだ。
「Windows Vista」からWindows 7への移行は通常、ユーザーのアプリケーションとデータが保持されるアップグレードという形で行うことができる。しかし、ブラウザが削除されるWindows 7の「E」バージョンへの移行は、クリーンインストールでしか行うことができない。
その時点で、ユーザーのシステムにブラウザが1つもインストールされていない状態になる。したがって、ユーザーが「Firefox」や「Opera」などのブラウザを使用したいと思っても、それを簡単に入手できる手段がない。Microsoftとしては、そのようなユーザーが可能な限り簡単にIEを入手できるようにする計画だ。同社は、小売店で配布するCD-ROMと、FTP(ブラウザの進化に伴いほとんど脇へ追いやられてしまった古いファイルダウンロード手法)を介してIEを提供する予定だ。
欧州連合(EU)はコンシューマーを保護するためと主張しているが、まさにそのコンシューマーにとって非常に不便な結果になる、とForrester ResearchのアナリストJ.P. Gownder氏は指摘している。EUは1月に、Windowsにブラウザを組み込むことは、欧州の独占禁止法に違反しているという予備調査結果を出した。
「規制による監督が不適切であるために起こった不幸だ。規制が完全にひとり歩きしてしまい、コンシューマーのためになっていない」(Gownder氏)
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