YouTube創設者のChad Hurley氏とSteve Chen氏は、ウォーターゲート事件を暴いた有名な新聞記者である第2のBob Woodward氏、Carl Bernstein氏になれるだろうか。
おそらくなれないだろう。しかし、かれらのサイトは急速に世界中の事件記者のライバルになりつつある。かつて、企業の不正行為、政府の汚職、警察官による残忍行為に関する情報を持つ人たちはCNN、Washington Post紙、あるいは地元新聞社に出向いていた。しかし、誰もが犯罪者の犯罪行為を撮影し、インターネットに投稿できる今、誰が従来のメディアを必要とするだろうか。
ある旅行者が米国時間7月25日、自転車に乗っていた人に対して、ニューヨーク市警のPatrick Pogan警官が正当な理由のない攻撃のように見える体当たりをした様子をビデオに撮影したことで、市民記者の力の拡大が浮き彫りになった。このビデオは27日、YouTubeに投稿された。もちろん、現場には目撃者もいたが、このビデオは、警官が報告書で述べた内容と大きく異なることを証明する最大の証拠になるだろう。
Pogan警官はデスク業務に異動になり、市警は調査を開始した。またしても、YouTubeは、権力者が説明した事件の経緯に意義を唱える力を市民1人1人に与えた。
米国の歴史上で、一般市民が得た情報から生じた論争を振り返ると、ほとんどの情報が、大手報道機関や政府機関によってフィルターがかけられてから公表されてきたことは明らかだ。
Daniel Ellsberg氏による国防総省秘密報告書(ペンタゴン文書)のリーク、Abraham Zapruder氏が撮影したJohn Kennedy大統領の暗殺の映像、George Holliday氏がビデオ撮影した、警察官によるドライバー、Rodney King氏への暴行。
もしこれらが現在起こったとしたら、おそらくいくつかはYouTubeに投稿されただろう。反応は同じだっただろうか。何年もの間、Zapruder氏と一部の報道機関はKennedy大統領の頭部が吹き飛ばされるシーンの公開を拒んできた。Kennedy大統領の死から12年後の1975年まで、フィルム全体が一般に公開されることはなかった。
この決定により、すでに混乱している市民がさらにショックを受けずに済んだのだろうか。それとも、大統領の死についてすべてを知る機会が奪われたのだろうか。
南カリフォルニア大学ジャーナリズムスクール主任で、Washington Post紙の前オンブズマンであるGeneva Overholser氏は、「かつては、(従来のメディアは)門番の役割を果たしていた。これらの門が取り壊された現在、わたしたちは、新しいメディアの新しいツールの使い方、この種の新しいジャーナリズムを生み出している市民との連携の仕方を見つけ出す必要がある」と述べている。
大半の市民が、政府やプロの報道機関が提供する情報に不信感を抱いているときに、ビデオ共有という現象が登場した。ブログや掲示板でニュースをチェックしている人もいるが、YouTubeほど、世界中の何百万もの人たちに情報を提供できる可能性を持つ手段を市民記者に提供しているという点で、評価を獲得しているサイトはほかにない。
個人がニュースを報道できるようになったことによる恩恵は、容易に分かる。従来の報道機関の関係者がいない場合でも、汚職、残忍行為、不正が暴かれている。
ミャンマー、チベットでは政府の規制が厳しいため、多くの場合、外国の記者はこれらの国での市民の暴動を撮影できなかった。しかし、目撃者がビデオを投稿するYouTubeでなら、何が起こっているか、世界中で見ることができるのだ。
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