インターネットをブラウジング中、誰かに肩越しにのぞき込まれたら、おそらく落ち着かない気分になるだろう。だが、これが逆の立場だったらどうだろう?
従来、クリックストリーム(訪問したウェブサイトの履歴)の公開は、プライバシーを侵害する行為と考えられていた。だが現在、いくつかの企業が、こうした情報の公開により、ユーザーの最も貴重な資産の1つとされるもの、すなわち、われわれの関心事から価値をひねり出そうと、取り組みを始めている。
わたしは先日、とあるIT系の会議で、Seth Goldstein氏が始めた「AttenTV」というサービスを知り、嫌悪感を抱くと同時に心を奪われた。AttenTVは、ほかのユーザーが訪問しているウェブサイトのビジュアルデータを提供するサービスだ。AttenTVの根底にあるのは、他人のブラウジング履歴がつい注目してしまうほど面白く、履歴を見た「ウォッチャー」たちが刺激を受けて、同じサイトをチェックするだろうとの考えだ。
電話インタビューに応えたGoldstein氏は、AttenTVについて「ただURLを表示するだけではない。URLを娯楽として提供し、娯楽に変える手段だ」と語っている。
実際、かつてはプライベートなものと考えられていた個人情報も、至るところで公開され、他人の娯楽に供されている。非常に個人的な事柄を詳しくブログに書き込んだり、個人的な写真を投稿したり、極端な例では1日24時間、常に頭にカメラを取り付けたまま生活するするのが、Web 2.0の世界では当たり前のことになっている。そう考えれば、自分が閲覧しているすべてのウェブサイトを世界中に公開するのも当然と思える日が訪れても不思議はない。
AttenTVはまだ試験段階だが、誰でも見る側、見られる側、あるいは両方のサービスに登録できる。AttenTVには、登録ユーザーのクリックを記録する「Attention Recorder」という「Firefox」向けプラグインが用意されている。だが、わたしはこれをダウンロードしなかった。わたしが思うに、それよりも面白いのは、ほかのユーザーが見ていたサイトが見られる「Attentron」というクライアントソフトだ。ちょっと気味が悪いって?確かに。それでも、わたしは見ないわけにはいかなかった。
一度ダウンロードしてしまえば、Attentronはとてもシンプルで使いやすい。ビューウインドウには「source(ソース)」、つまり各ユーザーのチャンネルを示すポップアップリストが表れる。チャンネルを選ぶと、それぞれにハンドルネームを持つユーザーたちのクリック履歴が見られる。チャンネルをダブルクリックすると、ユーザーがブラウジングしたサイトがタイムスタンプとともに表示される。また、数秒おきに回転する立方体が、訪問した各サイトのホームページを独創的な形で表示する。
ただし、ウェブサーフィンしている人の隣に座っているのと同じ体験が味わえるわけではない。パスワードで保護されたページの中身は表示されないようになっている(たとえば、GmailやBank of Americaのホームページは表示されるが、個別ユーザーのメールやオンラインバンキングの履歴は表示されない)。
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