1970年代後半のコンピューティング技術は今やほとんど残っていないが、注目に値する例外が1つある。世界のコンピュータの圧倒的多数で使われている、コンピュータの命令セットだ。
現在、世界中のPCとサーバの90%以上で使われているx86系の命令セットアーキテクチャ(ISA)は、Intelの「8086」マイクロプロセッサの一部として、1978年に市場に登場した。
したがって、2007年4月中旬に北京で開催される「Intel Developer Forum(IDF)」に集まる各国のIntelの開発者たちが、時間の大半を費やして話し合う技術は、Jimmy Carter氏が第39代大統領に在任中で、John Travolta主演の映画「サタデー・ナイト・フィーバー」のサントラ盤が米国でベストセラーアルバムになった当時に開発されたわけだ。
命令セット--簡単に言えば、ソフトウェアが使用可能な演算のリスト--は、もちろん、x86のほかにも存在する。いくつか挙げると、IBMの「Power」、Sun Microsystemsの「SPARC」、そして、Intel自身にもEPIC(明示的並列命令コンピューティング技術)を採用した「Itanium」プロジェクトがある。それでもx86の繁栄が続き、真のライバルがいまだに登場しないのは、x86が「必要にして十分な」パフォーマンスを実現できるからであり、また、約30年にわたって開発されてきたソフトウェアの膨大な蓄積があるためだ。
「コンピューティングの歴史に目を向けるなら、市場で劇的な要求や変化が新たに生まれることが原因で、大きな動きが起こることがわかる」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)でコンピュータ理工学の教授を務めるArvind氏は述べている。
しかし、x86に関してはこの法則の例外のようだ。ブラウザや、低コストのネットワークコンピュータなど、PCを不要にすると目される発明が登場しても、x86を支えるエンジニアが新しい状況に適応する方法を見つけるのだ。
これは問題なのだろうか?
批判的な人々は、x86は時代遅れの機能やソフトウェアに対応するという重荷を背負わされており、レガシーのためにエネルギー効率の改善やソフトウェアの開発が犠牲になってきた、と主張する。
コメディアンなら、1970年代後半に生まれたディスコだって、好きな人は今でも好きなんだからいいじゃないか、とでも言うだろう。
x86 ISAは1978年、Intelの8086プロセッサとともに登場した。当時でさえ、メモリアドレスを見つけ出す方法のせいで、市場で最もエレガントな実装だとは見なされなかったと、Mercury ResearchのアナリストDean McCarron氏は話す。しかし、IBMがわずかに異なる「8088」を新しいPCに採用すると、x86アーキテクチャは支持を集め始めた。
Advanced Micro Devices(AMD)の最高技術責任者(CTO)Phil Hester氏は、「これはもともと、スプレッドシートの実行用に設計される8ビットチップ(IntelとAMDの現行チップは64ビット)として検討されていた」と語る。そのため、当初の設計では、新時代のコンピューティングで必要とされる、十分な数の汎用レジスタなどに未対応だった。レジスタとはつまり、処理を待つデータを保持するための小さな停留所のようなものだが、汎用レジスタは、データと、データが保存されているアドレスの両方を格納できる点が優れている。
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