Apple Computerの精神は「Macintosh」にある。しかし家計は「iPod」が握っている。
2001年10月17日、シリコンバレーの「象徴的存在」Apple Computerは、前年同期比22%ダウンの14億5000万ドルを四半期収入として報告した。利益は半減。さらにDellなどの競合企業による低価格PC攻勢。Appleの泥沼が永遠に続くことを危惧する声もあがった。
しかし、Appleのファンは気をもむ必要などなかった。それから6日後の2001年10月23日、AppleはiPodを発表した。以来同社と音楽業界の運命は劇的な変化を遂げることになった。
その勢いは5年たっても止まらない。同社は、米国時間10月18日、9月30日までの第4会計四半期に870万台のiPodを出荷したことを報告した。この四半期に計上したiPodによる16億ドルの売り上げは、実に2001年10月におけるApple全体の売り上げを超える額だ。前年同期比で35%もアップしたこの金額は、慎重な金融アナリストの予想をはるかに超えるものとなった。
2001年の発売以来、iPodがコンピュータ、家庭用電化製品、音楽業界に与えた影響力はどれだけ強調しても誇張にはならないだろう。おそらくiPodは、コンピュータメーカーが開発した、音楽ファンと映像マニアの心を真につかんだ初めての「クロスオーバー」製品なのだ。iPodは、ホームエンターテインメントシステムに欠かせない存在としてのコンピュータのありようを示し、U2のBonoやMadonnaなどのポップスターが、Appleが誇るロックスターであり最高経営責任者(CEO)のSteve Jobs氏と冗談を言い合う関係を築いたのである。
Jobs氏は、CEOを務めるPixar Animation Studiosをメディアの巨人Walt Disney Companyが買収したことにより、Walt Disneyの取締役にも就任している。同氏は今やエンターテインメント業界で最も影響力のある人物の1人なのだ。コンピュータメーカーの取締役が、Steven Spielberg氏やDavid Geffen氏のようなエンターテインメント界の巨匠たちと並び称される日が来ようとは誰が想像しただろう。
それにしても、なぜあの小さなガジェットがこれほどの影響力を持つようになったのだろう?iPod、iTunes、そしてiTunes Storeの組み合わせという手段によって、デジタル音楽は簡単に手に入るようになった。iPodは合法的な音楽ダウンロードが機能することを音楽業界に証明し、iPod関連のアクセサリやアドオンが無数に生まれるきっかけを作った。そして、現在、Appleは映像分野への展開を進めている。人気テレビ番組や映画をiTunesで提供し、コンピュータやビデオiPodでの視聴を可能にしている。
「コンテンツの入手とアクセスだけでなく、再生や他デバイスへの配布が簡単にできるというモデルに、人気は深く関係してくる」と、Creative StrategiesのアナリストTim Bajarin氏は解説する。Appleの歩みを振り返り、将来の野望を明らかにする話を同社の経営陣に求めたが、コメントはもらえなかった。
デジタル音楽市場で、Appleの優位を崩す企業は登場するだろうか?
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