米国にある多くの大企業では、ここ数年、社員間のコラボレーション促進をねらって、企業向けの強力なコンテンツ管理システムを導入してきた。しかし、大きな問題が1つあった。誰も使わなかったのである。
ところが今、個人消費者向けサイトでお馴染みのブログやwikiといったツールが、企業内でも浸透しつつある。たいていは、エンドユーザー(社員)自身が使っているようだ。
業界ウォッチャーによると、現在広く普及しているWeb 2.0のテクノロジは、企業内でのコラボレーションにも極めて効果的であるという。シンプルで使いやすいため、エンドユーザーにとっては非常に魅力的だからだ。
「Web 2.0の根幹をなすのは、新しい形のコラボレーションを実現するこれらの新しい魅力的なツール群だ」とコンサルタントでXeroxの前主任研究員のJohn Seely Brown氏は説明する。同氏は、先週、ボストンで開催されたCollaborative Technology Conferenceでスピーチを行った。「Web 2.0は根本的に参加型のメディアだ」(Brown氏)
正確な定義はないものの、Web 2.0とは一般に、コラボレーションを実現し、オンラインで情報を共有するための各種Webサービスを指す。Web 1.0時代のアプリケーションと比べて、Web 2.0のアプリケーションは対話性が高く、静的なWebページとは違ったネイティブのデスクトップアプリケーションに近い経験をユーザーにもたらしてくれる。
Brown氏も、他の専門家と同じように、個人向けWebアプリケーション(ブログ、wikiによる協調型Webページ編集、タグ付け、RSSベースの購読など)でよく利用されているさまざまなテクニックが主要なビジネスアプリケーションにも取り込まれていくと予測している。
こうしたWeb 2.0テクノロジは、必ずしも、従来の複雑で構造化されたコンテンツおよび文書管理システムに取って替わるものではない、とアナリストは指摘する。
それでも、新しいウェブ標準規格に基づくサービスが普及すれば、文書を共有する手段として電子メールが使われなくなり、代わりに、wikiのような共有ワークスペースを介して共同作業するようになる可能性もある。
「コラボレーションおよびコンテンツ管理において、オープンソースであり、ほとんどが無償というソフトウェアが、信じられないくらい急速に普及している」とBurton GroupのアナリストPeter O'Kelly氏は言う。
「こうしたWeb 2.0アプリケーションは高品質で、扱いやすい。従来型アプリケーションを提供しているベンダー、とりわけIBMとMicrosoftは対策を考えなければならないときにきている」(O'Kelly氏)
コンサルティング会社Ernst & Youngでは、約50人の社員を対象に、ブログやwikiなどのWeb 2.0テクノロジを使用してコラボレーションを促進する試みを実験的に進めている。
「われわれはこれを『ウェブオフィス』と呼んでいる。知識労働者が、特定のトピックに関する専門知識など、必要な情報を簡単に検索し、進行中のプロジェクトを管理できるようにすることが目的だ」と同社の管理コンサルタントRod Boothby氏は説明する。
高度に構造化されたコラボレーションシステムを定義および構築するのに比べて、このプロジェクトでは最小限の統制管理しか行わない。例えば、ごく少数のブログだけで、顧客やプロジェクトといった話題を専門的に扱うという具合だ。
「プロジェクトはまだ初期段階だが、ブログやwikiなどのアプローチが『Lotus Notes』など既存のコラボレーションアプリケーションを置き換えるものではないということが分かってきた。このアプローチは、情報を容易に検索できるという意味でNotesに付加価値を与えるものだ」(Boothby氏)
IBMでは、FlickrやDeliciousといったウェブサイトをまねて、社内でタグ付けを始めている。
Dogearと名付けられたこの「社内向けソーシャルブックマーキング」システムでは、「IBMの社員が、ウェブコンテンツやその他の資料にユーザー定義のタグを付けて分類することができる」とIBM Lotus 部門のジェネラルマネージャMichael Rhodin氏は説明する。同氏も先週、Collaborative Technology Conferenceで講演を行った。Dogear以外にも、IBMでは、数千の「ダークブログ」(社員だけが読めるブログ)を開設して、開発者間のコミュニケーション促進を図っているという。
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