ロサンゼルス発--長い間変わらずにきたテレビの視聴率調査が、クリスマスの翌日からデジタル化され、、未来に向けた第一歩を踏み出すことになる。
Nielsen Media Researchは、たとえば水曜日の午後9時にABCの番組を観ていた視聴者の数を測定し、それをテレビネットワークや広告主に提供するというサービスを、何十年も前から提供してきた。しかし、TiVoなどのサービスを使ってゴールデンタイムの番組を録画し、あとで都合のよい時に観たり、飛行機での移動中にノートPCを使って観る人が増加していることから、同社が提供する視聴率データは精度が低下してきている。
Nielsenは、こうした新たなタイプの視聴者に対応するべく段階的な措置を講じることにしており、12月下旬にまず第一弾を実行に移す。これにより、視聴率データは番組の視聴形態によって、「リアルタイムでの視聴」「録画当日の視聴」「放送日から1週間以内の視聴」に分類されることになる。さらにNielsenは、テレビ番組がiPodや携帯電話、ノートPCなどのデジタル機器で観られた場合の視聴率についても調査を開始する。また、同社は料金の支払いを伴うオンデマンド番組の視聴率も調査することにしている。
これらの措置は、Nielsenにとって非常に大きな変化であり、テレビ界を揺るがしているパラダイムシフトを反映したものでもある。つまり、支配権が視聴者に移りつつあり、テレビ会社は慌ててそういった動きに対応しようとしているというわけだ。
NielsenのCEO、Susan Whitingは12月1日、当地で開かれた「Digital Entertainment and Media Expo」で、「視聴者はかつてテレビを囲っていた技術的な壁を打ち破りつつある。彼ら--とりわけ親の世代よりも容易に変化に順応できる若い世代は、手強い存在だ」と語った。
実際に、テレビ業界がデジタル時代への適応を急ぐなかで、典型的なカウチポテト族が絶滅の危機に瀕している可能性がますます明らかになっている。新種の視聴者層は、ビデオゲームを楽しむ人々と同じくらい能動的になっているが、こうした視聴者への企業の対応のしかた次第で、今後10年のメディアビジネスのあり方が土台から変わる可能性がある。
TiVoではデジタルビデオレコーダー関連のサービスを提供しているが、同社の幹部らは顧客が行うリモコン操作をすべて把握できる立場にあるため、こういった変化が起こるさまを目の当たりにしてきた。そしてそれは彼らでさえも驚くものだった。同社CEOのTom Rogersによれば、TiVoと契約する平均的な家庭ではリモコンのボタンを1日に350回押し、CMをスキップする率は70%以上になるという。
この傾向が示しているのは、メディアのコンバージェンス(収れん)という現象だ。しかもそれは、テレビがコンピュータに近づく、あるいは逆にコンピュータがテレビに近づくという従来の考え方で捉えられるものではなく、消費者がその双方を利用してコンテンツに積極的に関与していくというものだ。
「これまで、テレビの視聴者は受動的で、PCユーザーは能動的だと思われてきた。しかし実際には、テレビ視聴者はますます能動的になっており、決して受動的ではない」(Rogers)
活況を呈する現在、不透明な未来
現在では、能動的にメディアに関与することを欲する消費者に対して、その欲求を満足させる技術的な手段が数多く登場しており、また消費者の行動パターンの変化から大きな恩恵を被る企業もいくつか存在している。
TiVoは、独自のデジタルビデオ録画サービスを提供するケーブルテレビや衛星テレビ各社との激しい競争に直面しているものの、いまでもこうした流れの最先端にいる。
同社は、ここ数週間だけとっても、数多くの企業との提携を発表している。提携相手のなかには、ソニー、Intel、Apple Computerなどが含まれる。TiVoはこれらの企業と協力しながら、録画した番組を携帯機器やノートPCでも観られるようにしようとしている。同社では現在、インターネットにブロードバンド接続されたTiVoを使うことで、ユーザーがテレビ以外の情報源からコンテンツを検索し、整理できるようにすることに注力しているとRogersは説明する。
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