カリフォルニア大学バークレー校(UCB)は、高度な検索技術を開発するためのインタディシプリナリ(協同研究)センターの創設を進めており、Googleなどの大手検索企業にこのプロジェクトへの参加を呼びかけていることが、CNET News.comの取材で明らかになった。
UCBのこのプロジェクトは、インターネット検索分野の爆発的成長と同分野で生じた複雑な問題に対処するため、米国の大学が現在進めている数多くのプロジェクトの1つだ。
UCBは、かつて注目を浴びた検索エンジン「Inktomi」を生み出した大学であり、またGoogleのCEO、Eric Schmidtがコンピュータ科学の博士号を取得したのも同校だった。同センターのディレクター、Robert Wilenskyによると、UCBは多種多様な分野の技術/知識を結集して検索技術の開発に当たるため、さまざまな部門からおよそ20人の教職員を招集しているという。なかでも同校が特に重視しているのは、プライバシー、詐欺、マルチメディア検索、パーソナライズの4つの分野だ。
Wilenskyはインタビューの中で、「検索分野の成功によって生じた様々な問題を解決したい」と語った。同氏は、UCBでコンピュータ科学と情報管理学の教授を務めている。
同センターの物理的空間については依然として計画が練られている段階だが、Wilenskyは、向こう2、3カ月以内に設計を完成させ、2006年前半にセンターをオープンさせたいという。また同氏は、Googleをはじめとする検索企業各社にこのプロジェクトへの参加を呼びかけていることを明らかにした。
「検索分野に関心を持つ20人の研究者を1カ所に集めて、互いのアイデアを組み合わせれば、20人が個々に取り組む場合よりも、より大きな成果が得られる。(さまざまな知識や技術の)核反応が起こせるのだ。」(Wilensky)
年間売上50億ドルを誇る検索広告ビジネスの成功により、さまざまな形でインターネットの研究開発が促進されている。検索広告分野の成長により、YahooやGoogleといった数十億ドル規模の年間売上を持つ大手企業が新たな分野への投資を強化しただけでなく、それよりも規模の小さなドットコム企業も業績を回復し、さらに、多くの新興企業が専門検索の分野に進出している。
これから生まれる次世代検索技術を探すなら、大学のキャンパスに足を運ぶのが最善の方法だろう。現在成功を収めている検索企業の大半は大学で誕生した。「新たなアイデアの大半は大学から生まれる」と語るのは、ベンチャー投資会社Redpoint VenturesのGeoff Yangだ。同社はこれまでAskJeevesやTiVoなどの企業を支援してきた。
実際、GoogleとYahooは、2組のスタンフォード大学院生が、同じ学生寮の部屋でそれぞれ設立した企業だ。かつて検索分野の最大手だったLycosもカーネギーメロン大学(CMU)で誕生した。より新しいプロジェクトとしては、CMUのRaul Valdes-Perez教授が設立した新興企業のVivisimoなどが挙げられる。同社は、検索結果をクラスタリング化(階層化)し情報の取得を容易にするツールを提供している
検索に関する問題は、現在と5年前とではまったく異なっている。最近では、書籍や学術論文、テレビ番組がデジタル化され、インターネット上で掲載/配信されているため、文献や資料の検索に必要な技術も、それに対応できるよう進化する必要がある。今、人々に必要なのは、発見した情報を信用するための手段と、検索ツールを使って、より複雑な質問を行なうための手段だ。その2つがあって初めて(インターネット上から)さまざまな知識やアイデアを引き出すことができる。
CMUのLanguage Technologies Instituteでディレクターを務めるJaime Carbonellによると、同氏が率いる研究チームは、検索をパーソナライズする技術の開発に取り組んでいるという。同氏は、この技術が完成すれば、名前や検索履歴といった広範な機密データを取り巻くプライバシーに関する懸念の一部を解決できるとしている。CMUのプロジェクトは、YahooやGoogleといった民間企業によってすでにテストされたソフトに対し、補助的アプローチをとっている。YahooとGoogleの2社は、自社ネットワーク上で検索履歴の収集/保存を行なっている。
CMUは、PCにダウンロード可能なアドオンアプリケーションを開発した。このアプリを利用することにより、ユーザーは検索履歴や嗜好、お気に入りサイトといった個人情報を検索プロフィール内で保存/修正できる。この検索エンジンは、検索語と共にユーザーのプロフィールを参照することにより、毎回ユーザーに合わせた検索結果を表示できる。ただし、個人情報はネットワーク上ではなく各クライアントのデスクトップ上に保存される。
Carbonellによると、同技術は年内にも提供の準備が整い、CMUはオープンソースソフトとして提供するか、検索企業にライセンス供与するかの、いずれかの方法を選択するという。
CMUはさらに、政府から補助金を得て、問答形式の検索技術に焦点を当てた「Javelin」と呼ばれる、より長期のプロジェクトも進めている。すでにGoogle、MSN、Ask Jeevesといった検索サイトは、言葉の定義や「ロサンゼルスの人口は?」といった百科事典に記載されているような事柄に関する質問の解答を素早く発見できるサービスを提供している。しかし、「サンフランシスコからロンドンまでの便で、料金が最も安いのは?」や「コンピュータ科学部門が最も大きな大学は?」といった複雑な質問に関しては、解答を発見するまでにかなりの手間と時間がかかるのが現状だ。
Carbonellは「これは、動的情報だ」と述べ、さらに次のように続けた。「検索者は、質問文を分析し、複数の場所で解答を探し、それらを比較検討しなくてはならない。つまり、いくつもの段階を経なくてはならないが、われわれはそれらを1つのステップで行ない、ユーザーに(問題解決の)手掛かりを提供する方法を模索している」
同氏によれば、幅広い消費者が利用できるような拡張が可能で、さらに政府やインターネットユーザーが期待する効率性を提供できる技術を構築するには、さらに4〜5年はかかりそうだという。また、テキサス州やペンシルベニア州の大学も、この問題に対する別の解決方法を模索している。
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