中国との関係に苦慮する米国のIT業界

Ed Frauenheim(CNET News.com)2005年05月31日 10時31分

 米中の貿易摩擦問題が過熱するなか、米国のIT業界は、中国側の姿勢が変化するのを待ちわびている・・・ただし、中国に対しどの程度強硬に変化を求めるかについては、さまざまな意見が出されている。

 米国の企業や労働組合のリーダーたちは、中国が人民元を切り上げることを強く望んでいる。また、中国は知的財産(IP)の保護にもっと力を入れるべきだという点でも、彼らは意見が一致している。しかし、各企業の経営陣が穏やかなやり方を好んでいるのに対し、労働組合側は積極的な行動を求めている。雇用の喪失を食い止め、公平な競争環境を実現するには、中国製品に徹底して関税を課すことが必要になるかもしれないと、彼らは主張している。

 だが、こうした動きが貿易戦争につながり、ひいては米国のIT企業に被害をもたらすと批判する者もいる。IT企業の多くは中国でも事業を行っているためだ。

 さらに、両国の関係はより多くの問題もはらんでいると、オレゴン大学で政治学を教えるRichard Suttmeier教授は言う。同氏によると、米国のIT企業が中国との関わりを絶てば、中国政府が掲げる技術開発関連の野心的な計画が、経済面および地政学的な面で米国を脅かす結果になりかねないという。

 「中国をこのグローバルなシステムに組み込んでおき、彼らの技術的な発展が、多国籍企業各社の技術的な進歩と歩調を合わせて進んでいくようにした方が、われわれにとっても良い結果が出る」(Suttmeier)

 米国と中国は貿易摩擦問題について、長年衝突を続けてきた。問題の火種となっているのは、米国の対中貿易赤字だ。1994年時点で295億ドルだった米国の対中貿易赤字は、2004年には1620億ドルまで拡大している。

 両者の対決姿勢はこの数週間でいっそう鮮明になっている。米国は、一部の中国製繊維/アパレル製品の輸入を制限する動きに出た。また財務長官のJohn Snowは、中国の通貨政策を公然と非難した。

 多くの観測筋は、中国が、人民元の対ドル相場を固定しておくことで、実質的に輸出品の価格を引き下げているほか、元の価値を不自然なほど低く抑えていると主張している。財務長官のSnowは先ごろ議会に提出した報告の中で、中国が不公平なやり方で貿易面の優位を得るために、為替レートを操作しているとまでは主張しなかったが、それでも同氏は中国に対して、そうしたやり方を改めるべきだと注意を促した。

 「中国の現在の方針は、きわめて歪んでいる。これは、中国経済や貿易相手国、世界経済の成長にとってリスクとなっている」とSnowはこの報告のなかで述べている。

 中国はこれまで、通貨政策の改革を目指すと述べたことがあったものの、最近ではこの問題について態度を硬化させている。共産党の正式な報道機関である新華社通信によると、温家宝首相は、元の為替改革について、外圧には屈しないと述べたという。「為替レートの改革は中国の主権問題である。経済的な問題を政治化させようとするいかなるプレッシャーも、問題解決には役立たないだろう」(同首相)

 人民元が高くなれば、米国のIT業界にはさまざまな影響が出る可能性がある。米国は中国から、家電製品からソフトウェア開発まで、さまざまな製品やサービスを輸入している。人民元を中国が切り上げた場合、これらの輸入品価格は上昇するだろう。その切り上げ幅があまりに大きい場合、グローバルに事業を展開する企業は、他の地域へオペレーションを移す決定を下さなければならなくなる可能性もある。また米国でのオペレーションが競争力を増すことも考えられる。一方、消費者はWal-Martのような中国製品を大量に扱っている小売店で、これまでより高いお金を払って製品を購入することになりそうだと、GartnerアナリストのMartin Reynoldsは述べている。

 このように、中国の人民元切り上げが、米国消費者の財布を直撃することになれば、世論が黙ってはいない。その点を考えて、米政府は通貨問題で譲歩することになると、Reynoldsは予想している。「大雑把にいうと、これは単なる威嚇行動だ」

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