「派手な機能を追加するだけでなく、確実にセキュリティを強化すること」
これが最近のオペレーティングシステムメーカーの姿勢である。彼らは、製品の改良にあたって、人目をひくグラフィックや高度なネットワークツールといった機能だけに注力しているわけではなく、より強固な防御機能も提供するようになっている。
新世代の各OSには、データの安全性を高めるための改良が施されている。長い間ハッカーの標的にされ続け、顧客の怒りを買ってきたMicrosoftは、次期Windows「Longhorn」にスパイウェア対策ソフトやその他のツールを組み込むと約束している。また、セキュリティ関連機能の宣伝にはそれほど積極的でないAppleやLinuxディストリビュータのNovellも、セキュリティ機能を強化した新バージョンを最近リリースしている。
もちろん、OSメーカーは、いっそう円滑に使えるコラボレーション機能やさらに包括的な検索機能といった高度な機能も提供するつもりではいる。しかし、PCユーザーのセキュリティに対する懸念が大きくなっている今、OSメーカーは、ソフトウェアの脆弱化を防ぎ、外部の攻撃からシステムを保護するために、これまで以上に努力していることをユーザーに証明するほうが重要だと考えている。
「OSメーカーは、自社の製品が顧客に信頼されるかどうかに自分たちの未来がかかっていることを知っている。少なくとも現時点では、顧客はコンピュータを信頼していない」とForrester ResearchのTed Schadlerは言う。「セキュリティに対するおそれから、インターネットユーザーによる音楽ファイルのダウンロードやオンラインショッピング、オンラインバンキングなどの利用回数が減少している」 (Schadler)
ChoicePointサイトへの侵入事件など、世間の注目を浴びるようなセキュリティ関連事故が続いたため、個人の機密情報を保護する必要性が強調されるようになっている。また、フィッシングやオンライン詐欺に対する警戒感から、セキュリティ上のリスクは広く一般に知られるようになった。その上、悪質なコードの開発者は相変わらず、PCウイルスによる攻撃の手を緩めようとしない。
こうした個人ユーザーに対する脅威は、何もOSの脆弱性だけが原因というわけではない。それ以外の技術的な弱点を悪用したり、ユーザーの習慣を利用したものもある。しかし、そうした脅威に関して責任のほこ先はOSメーカーに向けられることが多い。
「ユーザーはセキュリティ問題にますます敏感になってきており、怒りを感じてもいる。誰かにこの問題の責任をとらせたいのだ。OSメーカーはいやでもそのことに目を向けざるを得ない」(Schadler)
ウェブデザイナーのEugene Abovskyは、仕事の合間に友人や家族がPCを快適かつ安全に使えるように手を貸しているが、セキュリティ面にこれまでの何倍も気を使う必要があるため、非常にたいへんになったという。Abovskyは、MicrosoftのWindowsしか使っていないが、次々に提供されるパッチを適用したり、マルウェア(悪質なソフトウェア)を防ぐことに時間をとられるため、Microsoftに対する不満がたまっている。
「Microsoftは、平均的なWindowsユーザーにこの程度のセキュリティ機能しか提供できていないことを恥じるべきだ。私が知人の家で面倒を見たWindowsコンピュータは、いずれも大量のスパイウェアやマルウェア、アドウェアに感染しており、ほとんど使えない状態になっていた」
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