PCメーカーらは、統一的で単純なスピード計測以外の方法でコンピューティングの性能評価を行おう取り組みを進めているが、現在スーパーコンピュータ分野においても同様の動きが見られる。ただし、誰もがこの新しい性能評価方法を歓迎しているわけではない。
スーパーコンピュータ上位500ランキング(Top500)の運営者は、「HPC Challenge Benchmark」というより広範囲なテストを開発したが、このテストではマシンの性能を多角的に評価する。これに対して、現在上位500ランキングで用いられているのは「Linpack」という数学テストだ。このランキングは年2回、鳴り物入りで発表されている。
「Linpack以外にもテストが必要なことは、ずいぶん前から誰の目にも明らかだった。ひとつの計測数値だけでは、マシンの全体的な性能は反映できない」とLinpackを開発したテネシー大学教授のJack Dongarraは述べている。同氏は現在、数値演算以外の性能も評価できる一連のテストの開発に取り組んでいる。
チップのクロックスピードが20%増加してもシステム全体の性能が20%向上することは滅多にないデスクトップPCの世界では、単純だが誤解を招きやすい計測方法を見直す動きがすでに起きている。チップメーカーのAdvanced Micro Devices(AMD)は2002年より、クロックスピードを使ったチップの命名方式を取りやめた。またIntelも、今年春からPentiumおよびCeleronチップで同様の方針に改めている。
Crayなど一部のスーパーコンピュータメーカーは、政府後援のスーパーコンピュータ用テストであるHPC Challenge Benchmarkに満足している。しかし、現在スーパーコンピューティング市場で積極的な動きを見せ、上位500ランキングのなかでも存在感を増しているIBMは、このテストにより慎重な姿勢を見せている。
7つのテストで構成されるHPC Challenge Benchmarkは、上位500ランキングの新たな計測方法としてLinpackに置き換わるものではない、とDongarraは言う。まず、Linpackは数十年も前から利用されているので、これなら高性能コンピューティング(HPC)の歴史的比較ができる利点もある。また、Linpackでハイスコアが取れないシステムは、他のテストで成績が上がることはないと、Dongarraは述べる。
この新しいテストは、日本のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」に驚いた米国政府が立ち上げたプログラムから生まれてきたものだ。地球シミュレータは2002年以来、上位500ランキングで首位の座をキープしきている。このプログラムは米国防総省高等研究計画局(DARPA)が資金を出しているもので、IBMやCray、Sun Microsystemsに新スーパーコンピュータ設計開発のための助成金が与えられている。。
「これは、DARPAと全米科学財団(NSF)および米エネルギー省のためにやった仕事だ。彼らはこのプログラムのためにコンピュータの全体的な効率を測る方法を求めていたが、Linpackでは十分ではないと実感したのだ」(Dongarra)
最新版の上位500ランキングは20日、ドイツ・ハイデルベルグで開催されたInternational Supercomputer Conferenceで発表された。
複数のベンチマークテストを組み合わせてマシンの性能を評価するというアイディアが持ち上がったのは、今回が初めてではない。同じく上位500ランキングの運営者であるErich Strohmaierは2000年に、Linpackを補うための複合テストを支持している。
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